イベント結果発表
私はゲームにログインし、前のモニターを見る。
先ほどまで不愉快なことがあったせいか、イベントの結果発表だというのにあまり気分が乗らなかった。ワグマとビャクロが心配そうに私を覗き込む。
「どうした?」
「めずらしく不機嫌ね」
「……ま、今さっきまであの前に戦った源さんについて調べようと学校に行った」
「そこでなんかあったのね……」
「しょうがないから助けてやることにする。ワグマ。いや、月乃。協力してくれ。あとタケミカヅチも」
「わかった」
「わかったわ」
別にいじめが嫌っていうわけじゃない。
いじめダメというが、いじめはどこにでも起きる。人間がいるのでどこかでは絶対に起きるのだ。負の感情が、劣等感が、優越感が強ければ誰だってなりうるのだ。
私は珍しくもあの源さんに同情をしてしまった。帰りにちらっと源さんの家を覗いてみると、母親はソファに座って酒を煽っていた。途中で源さんを呼んでは暴力を振るっていた。
学校ではいじめられ、家では虐待を受ける。救われないじゃないか。
「あんたが珍しく同情したの?」
「さすがにあの境遇は見てられなさすぎる。先生も動き出したし」
「なにがあったっていうんだ」
「簡単に言うと学校ではいじめられて、家では虐待だよ」
そういうとみんな黙ってしまった。
さすがに今はなすべきではなかったと思い、私はモニターを見ると、私たちが見事に一位だった。が、素直に喜べない。
「こんなこと聞かなきゃまあ、喜べたな……」
「いいじゃない。ゲームはゲームだと割りきりましょ。さ、イベントの報酬は何かしらね!」
「カラ元気だなぁ……」
私たちの目の前にウインドウが表示されたのでスクロールして適当に報酬をもらうことにした。
一位であるがためか、結構壊れスキル、壊れ武器、そして貴族になる権利などたくさんのものがある。今は現実のことを忘れてスキルでも選ぶか……。
つっても、あまり欲しいスキルは今ないんだけど。
「じゃ、私は大剣よね! いいのあったわ!」
「私は……この装備だ。柔道着に似てて動きやすそうだ」
「うーん。悩むなぁ」
私はスクロールしていく。
すると、ある物を見てしまった。ドラゴンの卵だという。ドラゴン……。あのドラゴンだよな。空を飛び、炎を吐く。
ミノタウロスぐらいしかテイムモンスターいないから、これでいいか。孵すには温める必要があるのかしら……。
どこかのポケ〇ンみたいに歩いたら孵らないかな? いや、それがあったら厳選作業が……何の話してるんだ。
私は選ぶものもないのでドラゴンの卵を……と思ったが、上の鳥の卵って言うものを選んだ。
すると、私の手のひらくらいしかない卵が私の目の前に現れる。
「え、なにそれ」
「鳥の卵、らしい。ダチョウの卵みたいだなあ」
「ダチョウの卵か……。美味しいらしいぞ」
「食べるの!?」
「いや、孵すさ。ドラゴンの卵の上にあったんだからさぞいい鳥だろうなって。鳥がいたら大陸の移動も簡単そうだし」
実際、隣の大陸と今の大陸しか歩いたことがないからな。
『ただいまをもって、イベントを終了いたします! 皆様、お疲れさまでした』
といって、私たちは全員リスポーン地点に転送されたのだった。




