初心者たち
ワグマはどうやらもう降りてきたらしい。
って時間を確認すると優に一時間を超えていた。さ迷う時間が多かったためか時計を見るのを忘れ、二時間ぐらい経過している。
ワグマは私たちを見つけるとビャクロに掴みかかった。
「どうして二人で探索するのよぉぉ! 私おいてかないで!」
「ごめんって。遅いから暇つぶしがてらって感じでボス探してたんだって」
「悪かった」
ゆさゆさと揺られ続けるビャクロ。
ワグマの後ろではタケミカヅチが苦笑いを浮かべていた。
「で、ワグマ。こいつら誰だ?」
「初心者みたいなのよ。鑑定してみるとレベル48ぐらいね」
「初心者抜け出したばっかりって感じか」
ゲームにちょっと慣れてきた人たちがこのエリアにいるっていうことか。
階層によって難しさが違う……。下に進めば進むほど難しくなっていく。きっと四階にいったら苦戦するだろうに。
このエリアでレベル上げして向かうのがいいだろうな。
「おー、ブーブたちじゃねえか」
「あ、スケさん」
「知り合い?」
「全員同じギルドです。初心者ギルドを作って僕たち八人で活動してるんです」
「へぇ……」
四人一班だから四人で二パーティーってわけたのか。
結構バランスよさそうな構成してるじゃないの。魔法使い2の盗賊1、剣士2の神官2、狩人1……。若干遠距離のほうが多いって感じだしヒーラーもいるから十分じゃないの?
鍛えたらもっと大きくなりそうなギルドだな。発展途上だとは思うが才能はあるんじゃないの?
と、私は推測したけど才能があるかないか見極めるのが一番うまいのはワグマだ。ワグマはどう見るんだろうか。
「あ、あの! イベント終わってからでいいので僕たちにいろいろ教えてくれませんか!」
「だそうだがどうする?」
「わ、私は無理よ。あまりログインできないしログインしてもやることあるし」
「私もさすがに現実のほうがやばいからな。それに、ちょっと用事もある」
「俺も年末は子供たちと遊んであげないといけないからごめんね」
「……えっ、暇なの私だけ?」
いや、私は警察官の父もいなければ社長の娘でもないし一般庶民だから暇なのは当たり前なんだけどさぁ。あの、私暇だから教えたほうがいいの?
なんていうかこの中で暇だって言うのもちょっと腹立つな……。
「パンドラ。教えてやんなさいよ」
「……しょうがねえなぁ。レベリングもするでしょ?」
「は、はい!」
「じゃ、雇用する料金として……」
「がめついわね」
「別に慈善事業ってわけじゃないからね。まあ金はいいよ。有り余ってるしその気になれば稼げるし」
今の金額で充分ってだけだからあまり最近は金策していないが、その気になれば稼ぐことは大いに可能だ。
闘争は嫌いだからな……。あ、嘘です。戦うのはちょっと好きです。
「じゃ、ま、とりあえずリーダーくんとフレンドになろうか。リーダーは?」
「お、俺、です!」
「んじゃ、フレンドね。申請送ったから」
「は、はい!」
「じゃ、私たちは行くからまた逢えたらね~」
私たちは崖を上っていくのだった。




