私の子供の頃のノスタルジー ④
甘いイチゴショートケーキを堪能していると、おばさんが何やら冊子を持ち出してきたのだった。
私の前に置くと、英語でアルバムと書かれていたもの。これはどうやらアルバムのようだった。
「このアルバムはねえ、眠ちゃんがまとめられてるのよー」
「え゛っ」
私は思い切りむせる。
実はというと写真に写るのが好きじゃない。というか、ここで見られたくない。月乃たちにも見せたことないのに! いや、小学生からの付き合いだから知ってると思うけど。
でも見られて確実に恥ずかしいのもあるんだよ……。
「へえ! パン子の! 見ても構わないかしら!」
「どうぞどうぞ」
「や、やめてええええ!」
私は開かせまいとケーキを置き手を伸ばすが、白露が手を伸ばし、強奪。
そして、ソファに座る月乃と白露がアルバムを開いたのだった。すると、ぷっと二人が吹き出す。こういうアルバムは苦手なんだっての……。
私は恥ずかしさのあまりちょっと下を向いたのだった。
「パン子泣いてる! めっずらしー!」
「これお母さんかな? 服引っ張ってるな!」
そして、おばさんは私に追い打ちをかけるかのように「DVDもあるわよー」というと、見たいと二人が言ったのでDVDプレイヤーで再生し始めた。
それは小学校二年生の時の運動会の映像だった。私は紅組で赤い鉢巻きを巻いており、元気に行進しながら入っていっている。そして百メートル走。
私は「よーい、どん」と同時にずっこけていた。
「こけた! あはははは!」
「わ、笑いすぎだっての! 停止してえ!」
これじゃ生き地獄だよ!
この時は先に何が起きるか知らずに純粋だったんだよ! 日々楽しく生きてたんだよ! 自分でいうのもなんだけど純真無垢な子供だったんだよ!
私はクッションに顔を埋める。
「お、インタビュー受けてるぞ。顔面土塗れだが」
『百メートル走どうだったかな?』
『もうやりたくないです……』
『そうかいそうかい! まあ、勢いよく転んだもんなー』
と、その時だった。
私の両親が近づいて私の頭の上に手を乗せる。わしゃわしゃと私の髪をぐちゃぐちゃに撫でる父さんにそれを苦笑いで見る母さん。
父さんの私服、相変わらずダサいと思ってしまった。
「父さん服ダサかったし、母さんちょっと料理の味濃かったんだよな」
「パン子が感傷的になるなんて……」
「うっさい! 私だってそりゃ親を想う気持ちはあるっての。まさか両親が目の前で自殺するとは思ってなかったし、今でも時折思い出すけどさ。やっぱり、こういうのって羨ましい気がする」
そういうと、月乃と白露は顔を合わせた。
おばさんはちょっと笑っている。涼介は見入っているが。私は、ちょっとこういう家庭が羨ましい。昔の自分はこういう風な幸福な生活を過ごしていたんだと思うとちょっとムカついてくる。
そのむかつきは心にとどめておいたが。
「ま、でも親を失ったからこそわかるもんもあったし別にいいんだけどさ」
「……なんていうか、私たち邪魔かしら」
「いや? むしろいてくれてありがたいかなー。ほら、家の掃除するんでしょ? おばさん。ありがとうございました。家の掃除するんで帰りますね」
「ええ。また来なさい」
「また来ます。今度もこいつら引き連れて」
私はそう言って靴を履く。
帰り際、後ろに涼介がたっていた。
「ま、また来いよ。俺は昔のようにお前と遊んでやるから」
「……もちろん、この町には思い出があるからね。またくるさ」
私はそう言って酒井家をあとにした。
ホームセンターに行く道中、二人はめっちゃくちゃ静かだったので、とりあえずいたずらをしかけたら私たちの気も知らないで!って怒られた。解せぬ。




