夜の学校七不思議 ①
今の時刻は午後八時。よい子は家に帰っている時間だ。
だがしかし、私は広瀬先生の頼みで学校に残っていた。どうやらこの学校は先生が見回りをするらしく、当番制だった。本当は広瀬先生は当番じゃないのだが、どうしても頼まれてしまったらしく、やれる人が広瀬先生しかいなかったらしい。
もちろん広瀬先生は一人で見回りは絶対に嫌だと言ったらしいが、悲しきかな、上には逆らえない。なので私に広瀬先生が頼んできた。
「本当はダメなんだけど……。私本当に夜の学校とかダメなんだよ……。今日だけなんだ! 今日だけ一緒に学校泊まって!」
「いいですよ。それくらい」
「ありがとう! その、このことは秘密に……。うるさい親御さんにばれたらちょっと面倒だから……」
まぁ、今は法律で多少緩くなったとはいえ、今も児童虐待だ、夜遅くまで残らせるとは体罰か? と喚き散らす人もいる。さらには悪いことをしたから叱っただけなのに体罰だと喚く奴もいるらしい。
教師というのは立場が狭いもので、親御さんには言い訳もできず、口答えもできない。だからこそつけあがるからな。
「もしパン子さんが自分で望んだっていってもさ……自分で望んだからなんだ? 子供は家に帰らせなくちゃいけないだろって言われるんだよね。いや、まあ、その通りなんだけど……」
「広瀬先生も大変ですね」
懐中電灯を手にしながら廊下を歩いている。
「そういや、見回りする学校って珍しいですよね? 監視カメラとか使わないんですか?」
「最近は乗り込んでくる人が少ないからね……。ただ、この学校って結構幽霊出るらしくてそれを見たさに結構忍び込む人が多いんだ……」
といっていると、懐中電灯を照らした先に明かりが見える。
本当に忍び込んできているらしい。すると、人影が見える。あちらも私たちに気づいたのか、走って逃げるような音がした。
「い、いくよパン子さん! 逃がさない!」
「そ、そんなスピード出さないでください私体力ないんです……」
たたたたと走っていく広瀬先生。
私はぜーぜー言いながら追いかけると、広瀬先生が生徒の腕を掴んでいた。私は生徒を照らすと、ジャージを着た先輩だった。顔は見たことないが。
「なにしてるの? 学校に忍び込んで」
「す、すんません」
と、私はあることに気が付いてしまった。
私は広瀬先生を見る。
「広瀬先生。手を離したほうがいいですよ」
そういうと、その男子生徒はにっこりと笑う。
広瀬先生は不気味がったのか、手を離した。すると、男子生徒はちっと舌打ちをしていた。私が気付いたのは男の足だった。
濡れている。なぜか濡れている。濡れているということを知って、ある七不思議が思いついたからだった。どうやら、この学校の七不思議は本当らしいな。
「広瀬先生危なかったですね。もう少しで冥界に連れていかれてましたよ」
「ど、どういうこと?」
「あの男の子、多分幽霊ですよ。七不思議の一つ、プールで死んだ男の霊……。この学校の七不思議の一つにありましたよね? 恰好もそれと似たような恰好でしたし」
というと、広瀬先生の顔が青ざめていく。
「ある日、水着を持って帰るのを忘れた男が夜、学校のジャージを着て学校に忍び込み水着を取りに来たけれど、先生に見つかってしまい追いかけられ、誤ってプールに落ちて溺れて死んでしまった。その男は先生に強い恨みをいだいており、毎晩水着を取りにいくために教室へ向かうがその時に教師にあったら冥界に連れていこうと……」
「いやああああああ!」
と、広瀬先生はうずくまってしまった。
マジの幽霊見たのは初めてだったけど七不思議は本当なのかもしれないな。見回りした先生よく耐えれるなこれ。
「私が一緒にいますから……。この学校七不思議に事欠かないんですよ。宿直室だけは七不思議もなんもないんでそこにいてください。私が見回りますから」
「ごめん……。本当に無理……」
広瀬先生はおぼつかない足どりで歩きだしたのだった。




