天国を考えたのは
手順1 この本を持ち、祭壇の中心に描かれた魔法陣の真ん中に立ちます。その時、異常なほどの魔力を感じるでしょうが気にせずに。
手順2 呪文を唱えます。すると、体が浮き、死なないスキルと宇宙スキルが取り除かれ、一時的に精神体となります。その間は自由に動いていいけど何も触れません! ただ浮くだけしかできません。
手順3 天国スキルを取得し終わると自然と自分の体に入れます。死なないスキルと宇宙スキルがなくなっていますので、そのスキルについてきた効果も一緒に消えるでしょう
注意:天国スキルを取得している間、体は動かず無防備となり、スキルも無効になってるため、攻撃されると死にます。信用できる人を傍に置いて守ってもらいましょう
と書かれていた。
私は早速本を持ち、中央に描かれた魔法陣の上に立つ。すると、確かに異常なほどの魔力を感じ取ることができた。
そして、私は暗記した呪文を唱える。
「スウアリマンシウクンテイイワカテクヨコッカ」
なんだこの変な呪文。
すると、確かに体が宙に浮き、私の視界は暗転したと思いきや、なぜか目の前にはメルセウス様とマリアウス様がいたのだった。
「お、天国スキル取得最中?」
「ならちょうどいい。パンドラー、肩揉んでー」
と、マリアウス様に言われたのでとりあえず肩を……。
「スウアリマンシウクンテイイワカテクヨコッカ……。何の意味も持ってなさそうな文だよなぁやっぱ」
「それ私が考えた奴だー」
「なんでこんな意味なさそうな文字列に……」
「パンドラ。意味はありますよ。逆から読んでみなさい」
そう言われたのでちょっと考えてみることにした。
スウアリマンシウクンテイイワカテクヨコッカを逆から読むと……。
「かっこよくてかわいい天空神マリアウス……」
「くだらないでしょう?」
「くだらないとは失礼な! 事実だろー! むふふーっ」
「こんなくだらない呪文でぶっ壊れのスキルが手に入るって複雑……」
「心中お察ししますよ。パンドラ」
「二人してひどくなーい?」
私としたことが逆読みに気づかなかったとは。
というか、こういう呪文だと思い込んでいたけどいざ内容を知るとちょっとくだらねえ……。この天空神ぐーたらでナルシストらしい。今も寝そべってるし。
「まいいや。天国スキルは私自ら手掛けたもんだからねー。始まりの神が本当に手掛けたスキルは結構強いよー」
「始まりの神が本当に手掛けたってことは普段スキルを手掛けてるのは違う人?」
「大体下級神が多いかなー。禁術になると上級神でーす」
会社みたいだな。
平社員の下級神……。
「ま、私は手掛けてませんがね……。四つしかないのは四人しか手掛けていないのです。天国スキルは知っての通りこいつ」
「こいつってひどくない?」
「で、地獄スキルが冥府神、神スキルが創造神、真の勇者スキルが太陽神ですね」
「ほえー。メルセウス様は作んないのですか」
「私は……作ったんです。作ったんですけど……」
「ほかの神から地味だといわれて結局拗ねてやめたんだー」
何それ可愛い。見た目お姉さんなのに拗ねるとか可愛すぎる。
「こほん。まあ作っただけいいんです。破壊神なんかは作るのはだるいといって作りませんしジュラウトスに関しては作ったけど私と同じ地味で却下された挙句ずっと考えてますし」
「考えるだけいいんじゃないかなー? 思考を止めないほうがえらいよねえ」
「うるさいですよ。マリアウス」
なんとなくマリアウス様の意見に賛成しそうになった。
「ま、まあ人によって得意不得意はそれぞれですし、破壊神は創造より破壊が好きなので作るということには向いてませんし、メルセウス様もスキルを作るよりいろいろと裏の仕事のほうが得意でしょう?」
「そう! そうなんです! 私はどちらかというと調節のほうが得意なんですよ! ほら見なさいマリアウス! 私の眷属はしっかりわかってますよ!」
うん。いや、私としてはマリアウス様の意見に全面的に賛成なのだが、眷属として活動してる今メルセウス様の顔を立てないのはどうかと思ったんです。
神様お許しください。私は神に嘘をついてしまいました……。アーメン。
すると、私の体が光りだした。
「おや、もう取得し終わったのですね。なら話すのは終わりです。ああ、そう、帰るついでにあそこのクズも持っていってください」
と指さしたのは一人の男性だった。
顔に滅茶苦茶傷がついているローキッスだった。クズ……。ボコボコに殴られてる……。
「くすねたからちょっとばかし説教を」
「説教というにはいささか傷がついてるんですが……」
「私の説教は心に傷がつくって神様の中では有名ですから」
「心にって言うか、体に傷がついてるんですが……」
「とにかく持っていってください」
「は、はい」
これはあれだな。
説教だと響かないからメルセウス様拳でボコったな……。こ、こえー。女怒らせるとこえー。私も女性を怒らせないようにしとこ。




