祭壇へとつながる階段
天国の手に入れ方の本を読んでみる。
まず初めに、満月の夜の神殿の祭壇で行うことだった。日付的に、今日が満月の夜だ。もうすでに月が上ってきており、私たちは急いで神殿に向かう。
神殿はというと、アバロン教が仕切っており、私たちを見るや否や警戒していた。
「アヴェールいる?」
「アヴェール様なら部屋におられますが……。魔王軍が何のようで?」
「いや、君たちにいいものを見せたくて。ちょっとアヴェールに会わせて。パンドラが訊ねてきたって言えばアヴェールくるから」
そういって一人が伝達に向かった。
数分後、アヴェールは眠たかったのかあくびをかまして私の元にやってくる。気を抜いてんな……。暗殺されるかもとかは考えないのだろうか。
「なんです? 書類仕事がやっと終わって今日は早めに寝ようと思ったのに……」
「祭壇を使わせてくれないか?」
「祭壇? 神様にでもお祈りするのですか? いつから神を信仰するようになったので?」
「そうじゃないけどある儀式の為に必要なんだよね」
私がそういうとアヴェールはため息をつく。
「祭壇は私たちにとっても神聖な場所。そんなおいそれと私ですら入れないのですが……。まああなたは神の眷属ですからね。ダメといえませんよ」
そういえばそうだったな。海王妃という種族だ。
種族的にも助けられ中に入っていく。神殿の中はちょっと薄暗かった。月の光が差し込んでくるがね。祭壇は神殿の裏の山の頂上にあるらしい。
アヴェールの話によると神様は魔力を好むと信じられており、一番魔力の多いところに祭壇を作るということでアバロン教はこの山の裏の頂上が一番魔力が濃いためにここに作ったんだという。
「なにをなさるつもりで? 世界を破壊する呪文ですか?」
「そんな大層なことするわけないでしょ。さすがに世界を破壊するなんてことはできないっての。本物の神じゃあるまいし」
「それはどうなんやろなぁ。あんた世界を破壊しそうやもんなぁ」
と、気が付くと後ろにローキッスがいたのだった。
「うへえ!? いつからいたの!?」
「ついてきたんよ。あんたら天国スキルみたんやろ?」
「知ってるの?」
「この世界の創造に、俺も関わってるんやで? それぐらい知っとるわ」
そうだよな。
神話にも載っているほどだ。ローキッス。遊戯神。始まりの神の一体だから知っているのは当たり前か。
「天国スキル。それを手に入れた人は本当に神に近い存在となったという。だがしかし、禁術を二個以上取り入れる力がないとスキルに飲まれてしまう。だから面倒なことが必要なんや。禁術は暴走しても被害は最小限で済むが、天国スキル等は暴走してしまえば神ですら手こずるんや」
「へぇ、だからこんな禁術でも面倒な手段を……」
と、そこまで言うとちょっと気にかかる発言があった。
「ローキッス。等ってなに?」
「なにって……そら天国スキルとあと三つのスキルやろ?」
「あ、あるの? まだ」
「そらあるわ。知らなかったんか? 他は地獄スキル、神スキル、真の勇者スキルやな」
四つもあるのか……。
祭壇につながる階段をひーひー言いながら登りつつそう話していた。
地獄スキルと神スキルの手に入れ方はいまだにわかってない。真の勇者スキルはタケミカヅチが持っている勇者スキルの上位互換版だろう。
「ちなみに地獄スキルと神スキルは俺が持ってる……」
「まじで!?」
「ちょっと遊びで前にいったときくすねてきたんよ。いや、ばれたら殺され……」
その時だった。ローキッスがいきなり消えた。あ、呼ばれたなこれ。
なんとなく、ローキッスがシバかれているような気がした。
そして、祭壇に続く階段を上り切った。




