苑木くんの家 ③
高津ってあの一度だけあったあの苑木くんを煽ったやつか? あんな高飛車そうなの。
私は食べ終わり廊下を歩いていると手を組んで苑木くんが歩いてる様子が見える。苑木君の顔は嫌そうな顔をしているが高津は気づいてないらしい。
あんな無愛想な顔でよく感情がわかるなと思うのだが、私も結構表情筋を動かさないためになんとなくわかるんだろうなと思いました。私が笑うのって相手を嘲笑うときとかだしな。終始無表情が多いらしい。自覚ないけど。
すると、こちらに歩いてくる。
「あ」
「あら?」
「はぁ……」
私はメイド服に着替えていた。
大丈夫、もちろんばれないようにやってるさ。
「あなたは目にしたことがありますわね? どこかの庶民でしょう?」
「覚えていてくれてたんですねありがたいです。私のことなんか忘れてると思ってましたよ眼中になさそうだから」
「あなただけが庶民ですもの。それで苑木家でなにをなさっているのです? まさか、苑木様は婚約者がいるのにこの庶民にっ……!」
「いえ、私はバイトで苑木家のメイド……違うな。住み込みで働かせてもらってるのです。庶民なんでお金がなくて金払いが結構いいのでね」
「あら、そう」
こういう言い訳は大得意だし見つかった時を想定しないわけじゃない。
メイド服どこにあるか聞いておいてよかったー。こういう恰好も相まって信用性が高まるだろう。制服とかも結構有効だ。
その職業にあった服を着ることでうまく騙せるもんだ。私は嘘つきだからこういう嘘は大得意。
「健斗様の様子が気になってついのぞき見してたことは謝ります。申し訳ございませんでした」
「き、気を付けろよ。次はない」
「かしこまりました」
といって苑木くんは高津を連れて去っていった。
はぁ。なんか疲れる相手だなぁ。ああいう男に媚びるような奴はそんなに好きじゃねえんだけどな。相手もお嬢様だし結構相手どるのは大変だしな。
高津が帰ったという話を聞いたのは午後四時のことだった。
その間私はやりたくもない庭の掃除などをしていた。さすがに仕事をしてないと怪しまれるからな。帰ったと聞くまでは仕事をすることにした。
苑木家に仕える人たちのいうことも聞きながらやりたくもないことをやっていた。くっそだるかった。
「夢野……。悪かった」
「いいよ。あー、外寒かったー。なんでメイド服スカートなんだよ寒いんだよ」
「その、仕事した分の金は払う。それとお詫びも……」
「なんでもかんでも金で解決しようとすんな。いいよ。ああいう厄介なやつどこにもいるししゃあないっての」
金がなくてもあってもかっこいい男に媚びるやつは少なくないのだ。
そういうやつに限って結構男運がなくて将来的に後悔することをしっている。見た目で選んでもいいことなんかまるでないからだ。
それに、結婚したからには愛されたいっていう願望を持ってる人が多いからな。厄介なことだ。そういうのがタチ悪い。私たち庶民ならまだしも金持ちというのは相続問題というのが出てくる。愛がない結婚なんてざらにあるだろうに。
「あれはきっと死んでも治んないタイプだから気にしないでいいよ。もしも本当に嫌になったら私が何とかするから」
「金持ちでもないお前に何ができる?」
「金持ちじゃないけど金持ちの友人はいる。その立場を悪用してあれこれして潰すさ」
「……こわ!」
「よく言われる」
私は怖くないのにな。




