苑木くんの家 ②
お昼は苑木家で食べることになったのだが。
目の前には苑木くんの父と母とみられる人が座っている。正直結構緊張はしている。こういったところって作法にうるさいし気をつけて食べなくちゃならないのが難点だ。
私はフォークとナイフを使って口に運ぶ。
「綺麗な作法だな」
「そう?」
「見事ねえ。誰から教わったの?」
「ど、独学です」
きっとおいしいんだろうけど味が分からない。
目の前にいる人も月乃と同様に結構やばい人なんだろうなぁ。金銭的な意味で。私なんか金の余裕はないし羨ましいなぁ。金持ちになりたいなぁなんて。
まぁ、月乃からは株やればいいっていうけど……。正直言って面倒くさい。かといって働くのもだるい。
「ど庶民の私が一緒でよかったんですか? 近くにあるファミレスで私食べてきてもよかったのですが……」
「いいじゃない。わざわざ行くの面倒でしょ? それに、あの健斗が連れてきたんだからねぇ。もちろん好きだとか言ったらぶん殴ってたけど」
「あはは……。婚約者もいる手前そんなこと口が裂けても言えないでしょうし私なんかそんな可愛くないですからねぇ」
「そう? 私としては結構可愛いと思うわよ?」
見た目はいいって言われるんだけどなぁ。性格がなぁってよく言われる。まったく。こんな天使みたいで優しい人なんか類を見ないっていうのに。
「あんな無愛想な健斗があんだけ笑顔を振りまくとはなかなかな子だな。吽神家のお嬢さん以来初じゃないか?」
「そうねえ。無愛想だからねえうちの子……」
「俺の話はいいだろ。それより食べ終わったからもう行く」
「恥ずかしくなって逃げた」
私がそういうと苑木くんはごちんと私の頭にゲンコツを食らわせた。
苑木くんがいってしまい、苑木くんの両親三人と一緒にご飯を食べている。すると、目の前の苑木くんのお母さんがため息をついた。私なんかいるなって言うんだろうか。
私はちょっと動作を早くし、なるべく早く食べ終わっていこうと思ったのだった。だがしかし、それをみた苑木くん母はため息をついた。
「ごめんなさい。あなたがいるってことは嫌じゃないのよ。ちょっとあの子が心配でね」
「あんなに無愛想だから将来やっていけるのかとな。私の会社継がせるとなるともうちょい愛想を振りまいてほしいのだが」
「愛想振りまいたところで逆に怖いのでは……?」
「「それもそうね(だ)」」
見事に二人の声がはもっていた。
その時、私たちのところにまた苑木君が入ってきたかと思うと私に耳打ちをしてきたのだった。どうやらその顔はマジの不機嫌な顔だ。
「高津がきた」
とだけいってまた去っていく。
「何を言われたの?」
「いや、うーん。高津さんが来たらしいです。幽霊?」
「高津……。ああ、高津家のお嬢様がまた来たのか……。懲りないものだなあ」
と、両親はマジのため息をついていた。




