苑木くんの家 ①
遊園地行った翌日、私は苑木の家に招待されていた。
ゆっくり家で過ごしていたら急に我が家の前に高級車が止まり、夢野様ですかと黒い服の男が訊ねてきて、体を小さくさせられるのか!? どこぞの名探偵みたいにと思ったら苑木家の使いだった。
勉強を教えてほしいということで訪れたが。
「ほぉー、月乃のとこと比べるとちょっと見劣りするけどそれでもすげー彫刻」
「俺も見栄というもんがあるのと、親父が彫刻の類が好きなんだ」
「ほえー」
そういいながら苑木家の屋敷の中を進んでいく。
洋館ではなく、和のテイストのほうが強い。日本家屋のような感じで二階はないし、畳の部屋も多い。月乃の家はおもいっきり洋って感じなんだよな。
こういう和も悪くない。
「最初から思っていたがお前肝が据わってるな。俺がお前の立場なら結構遠慮するのだが」
「遠慮なんかしてたらここにこないって。遠慮するくらいなら体よく断るから」
「そうか…」
「こういうシチュ乙女ゲーにありそうだけど」
庶民の女の子が御曹司の家に案内された!
御曹司の男の子は自分に怯えないのかと聞くと怯えないと答える! その答えに感銘を受け、徐々に惹かれていくのだ……。みたいな? いや、現実はそうさせないけど。
そもそも吽神さんっていう婚約者いるしね。
「ここが俺の部屋だ。たいしていいもんはないから期待はするな」
「はいはい」
苑木くんの部屋に案内された。
机があり、ベッドがある。ここだけは洋室って感じがするな。苑木くんは和が合わなかったのだろうか。
まあいいさ。ちゃぶ台とかあっても困るからな。星一徹になれって言うのかしら。
「次こそはお前に勝ちたいからな。模試で。だから教えてほしい」
「敵に回るやつに教えろって?」
「自分の手の内を秘密にしておく奴でもないと聞いた」
まあ、そらね。
そもそも手の内は結構ありきたりなことなんだけどね。ただひたすらありきたりなことを詰め込んでるだけ。自分の才能もあると思うんだ。
「次こそは勝つ」
「うけてたとう」
苑木くんからそう挑戦状を受けたのだった。
苑木くんは机に向かい、ノートを広げる。そして、私はその隣に立ち、覚え方のコツなどを説明していくことにした。
覚え方というコツがあり、解き方のコツがある。それさえつかんでしまえば結構楽勝なのだ。よく言う例でいうと歴史の年代の語呂合わせみたいな。本能寺の変は1582年でいちごパンツって言うような感じでね。
本能寺の変なんでいちごパンツなんだよ。可哀想だろ。おかげで明智光秀がいちごパンツはいてたんじゃね? と無邪気な小さいころは思ってたわ。とんだ風評被害だろ。
そういったような感じで私は教えていくのだった。




