閑話 ミキちゃんの戦闘 ②
私たちは空中を落下していた。
「だから倒すなって言ったのに……」
「こ、こうなるってわかんないでしょ!」
「あの上に乗ってる時点でわかるんだけど……」
パン子さんみたく空中を浮けるわけでもなく、ただ無抵抗に落下していた。結構なデカさの魔物だっただけあり、落下する高度も崖から落ちたのと同じくらいだ。
どう抵抗しても落下するだけなので落ち着こう。
「それにしてもあれはなんだったの?」
「あれって多分泡入道って言う魔物だろうね。特に何もするわけじゃなくただそこに座ってるだけなんだけど……。怒らせると怖い奴」
「泡入道……」
「そろそろ地面が近くなってきたよ」
私たちの眼前には地面が迫っている。
このままだと落下ダメージは免れないだろう。回避する術は悲しきかな、私たちにはない。
「これ、わんちゃん全体力削られるんじゃないの!?」
「結構な高さだからねえ。普通は人が死ねる高度なんだけど……」
「初めての死が落下!? なんか気に入らねーーーーー!」
そして、私たちは勢いよく地面とぶつかったのだった。
リスポーン地点は魔王城のそれぞれの個室にしており、気が付くと私はベッドの上に眠っていた。どうやら本当に死んだらしい。
デスペナルティなのか、魔力が途切れ、スキルが一時的に使用できなくなってる気がした。
この程度で死ぬってA2Oのときはなかったなあなんて思いつつ部屋から出るとなにやら魔王城の前で数人がたむろしていた。
剣を片手に持って、何かを相談し合っている。これ、迎え撃った方がいいのかな。と思い、刀を手にして玄関ホールまでいくと、勢いよく扉が開かれた。
そして、数人で集まっていた男のリーダー格が「魔王よ! 俺たちが討ち取る!」といっていた。
「残念だけど気づいちゃった以上私がやるしかないか……。死んだばっかでデスペナ中なんだけど」
「やんのか? やっちまえ! 魔王軍といえど袋叩きすれば問題はないだろ!」
「あまり子供に手出しはしたくないんだけどッ!」
私は剣を持って駆け抜けた。
スキルは使用不可、つまり私自身のスキルでやらなくちゃいけないというわけだ。
「くらえ!」
「遅い」
魔法をうってきて、それを躱しスライディングで転ばせる。転んだと同時に切りつけた。急所を狙えばほとんど一撃なので首元あたりを切っている。
低姿勢の私の足を掴み、移動できなくさせてくるやつがいた。そして、目の前に棍棒を振り下ろそうかと言わんばかりにふりかぶっている。
そして棍棒を振り下ろしてきたので大きくのけぞってそれを躱す。足を掴んでいるやつの首に刀を突き刺し絶命させ、そして棍棒持ってる男を縦に切りつけた。
うん、衰えてはいない気がする。
「魔王軍として何も活躍してないからさすがにここで活躍しておかないとね……。入った意味がないや」
私は剣を構えた。
その瞬間、死んでない男たちの顔に恐怖が生まれていた。ぶるぶると震えており、戦意は既に失っているようにも見える。
私はわざと隙を作ると、男たちは逃げ出したのだった。
「……立ち向かう勇気もないのか」
それにしても、結構袋叩きに弱かった私が勝てたってことは成長してるなぁ。




