フリーフォール
私はフリーフォールというアトラクションに乗っていた。
地上には月乃と白露、そして玲奈ちゃんが私を見上げている。なんで私一人なのかというと、罰ゲームだからだ。
じゃんけんで負けて一人で乗ることって言われて負けたらこのザマだ。
「なんか、パン子の処刑って感じがするわね……」
「死因は転落死か?」
「パン子のことだから地獄に行くだろうな」
「はっはっは。違いないかなー」
私は笑ってそう返すと、玲奈ちゃんが白露の服を引っ張っていた。
「おねえちゃん死んじゃうの……?」
「い、いや、冗談だ。気にするな」
ピピピと機械音が鳴る。
そろそろ発射するらしい。
「じゃ、楽しんでくるわ」
「あんたが罰ゲームだとなんか面白くないわね……」
「怖いもんは基本ないからな」
すると、徐々に浮いていく。
そして次の瞬間、勢いよく上に向かってどぴゅーんと上がっていった。じ、Gがかかる! 私は、レバーにつかまり、地上を見渡した。
「ひょえ~たけえ~」
月乃とかが点にしかみえないほど小さく感じた。
そして、今度は勢いよく下に落ちていく。風がすごい。私の髪が上にたなびく。私は地上すれすれまで行くとまた上にびゅーんと上がっていく。
こういうアトラクションも悪くない。
どうせ処刑されるんならこういう風に楽しく派手にやってほしいもんだな。断頭台で首を切られるつまらない死に方はしたくない。
そしてアトラクションが終わり、私は笑顔で戻っていくと、月乃たちはアイスを片手に出迎える。私が乗ってるときにアイスなんか買いやがって。
私はため息をついた。
「アイスどこで売ってんの? 私も食べたいんだけど」
「あんたタフねえ……。これ結構怖いってことで有名なんだけど」
「ちなみにあそこだ」
「わかった」
「買ってあげるわ。みんなにも買ったし」
と、アイス店に行くと月乃が金を払うというので私は好きな味をトリプルで選ぶことにした。
「バニラ、ストロベリー、チョコミントで」
コーンの上にアイスが重なっていく。
現在は冬なんだけどこういうアイスも悪くない。冬のほうがアイス美味しい気がする。ぬくぬくのこたつの中で食べるカップアイスはマジで至福だ。とても悪くない。
それに、次は謎解き迷宮いくらしいし頭を動かすためにも糖分を~。
ペロペロとアイスをなめていると、男の子が私にぶつかってきて、そのまま私はこけてしまった。
アイスがべちゃっとなった。
「あら」
「あんた買ってそうそうこけたわね」
「いや、まあぶつかってきたから……」
男の子はごめんなさいといい、親が駆け付けてくる。
「す、すいません。怪我はありませんか?」
「ないよ。砂ぼこりが服についた程度だから」
「そ、それならよかった……。あ、アイス……」
「ああ、落としちゃったんですけどいいですよ」
また買えばいいし。遊園地に来てはしゃぎたい気持ちもわかるから仕方ない。子供はどうしてもはしゃぐものなのだ。
それぐらいで怒る私じゃない。
「あなた気を付けなさいよ?」
「は、はい! って、月乃さん!?」
「なに?」
「も、もしかしてこちらの方は……」
「私の友人よ。あなたに似て息子もせわしないわね……。もうちょいゆっくり楽しみなさい」
「は、はい!」
「ゆっくりやれば確実にできるんだから……。ってなんで今仕事についていってるのかしらね。ごめんなさい。今日はゆっくり楽しんでくださいませ」
と、月乃が礼をしていた。
その傍ら私はちょっと笑っていた。
「に、似合わねー!」
「お嬢様って感じがするな」
「お嬢様よ私は」
丁寧な口調で応対する月乃は今だになれない。




