パン子の家を訪れた月乃たち
私はパン子の家に来ていた。
パン子のことだからきっと暇してるだろうし伝えなかったお詫びとしてパン子が好きなアワビとか持ってきてあげた。
私はインターホンを鳴らすと、はいはーいと男の人の声が聞こえる。
「叔父さんでも帰ってきてるのか?」
「まだ……のはずだけれど。そういや軽トラ停まってるわね」
「ほんとだ」
隣の白露と一緒に首をかしげる。
すると扉が開かれ、見知らぬ男の人と目が合った。
「おや?」
「あ、初めまして。私はパン子……じゃない眠さんの友人なんですけど眠さんいます?」
「あー、今買い物にいってて。いつ帰ってくるかわからないから待ってるかい?」
「そうさせてもらいます」
パン子が出かけてるとなるといつ帰ってくるかわかんないんだよな。
好奇心旺盛だから気になるものは結構触ってくるし。五時には帰れそうとかいっても帰ってきたのは六時だったって言うのもざらにあった。
だから待ってる方が賢明なのだけれど……。
「パン子の部屋で漫画でも読んでましょうか」
「パン子スポーツ漫画おいてないからあまり気が進まないのだが……。どっちかというと文字の本が多くないか?」
「まあパン子は本も雑食だからねえ。漫画、純文学、ミステリー小説、ライトノベル……全部基本好んで読むもの」
私はお邪魔しますといって中にはいる。
すると、ビールの缶がころころと転がってきていた。リビングのほうを見てみると昼間から酒を飲んでいる男の人が見える。
酔っ払い……。
「おう、嬢ちゃん達なにしにきたんでえ? こっちきて話そうぜえ」
「え? あ、わかりました」
「素直に応じるんじゃないわよ白露……」
「ここにいるってことはパン子の関係者だろう? それに、悪い人ではないと思うぞ」
「そうね……」
私たちはリビングに行くと顔を赤くした人がもう一人の男の人に水を飲まされていた。
「兄さんも水を飲みながら酒飲んでよ。からまないの」
「だってあいつの友人だぜえ……? 気になるじゃねえかよぅ」
「それは否定できないけど」
ふむ、兄さんと呼んでいるから兄弟か。
となると叔父さんたちだな。パン子の父のほうの。となると裕介さんって人ね。起業して社長をしているって言う……。
挨拶だけはしておこうかしらね。
「裕介さんはじめまして。私は阿久津 月乃と申します。お見知りおきを」
「阿久津ぅ? 俺んとこのでっかい取引先の一つと同じ名前してんなぁ」
「……阿久津さん。阿久津さん?」
「取引先というか、本当に取引してますよ……。酔ってるんで頭が回ってないんでしょうけど」
「そ、そんな偉い方だったんですか。失礼しました。兄がこんなんで……」
「まあパン…眠さんも眠さんですから」
パン子もパン子だからなぁ。
私には基本失礼だしもうそんな失礼も慣れた。
「阿久津ぅ……ビール持ってきてくれえ」
「おまっ……兄さん! 其れだけはダメだって! あんたんとこの取引先の社長令嬢だろ!?」
「めんどくさがりなところパン子もなのよねえ……」
「ダメなところは似るもんだな」
「そうね。そうなのよね……」
私は立ちあがり冷蔵庫の中からビールを持ってくる。それを思いっきりしゃかしゃかしてやった。せめてもの当てつけだけれどね。
私はたらいと一緒にビールをもっていく。たらいを下にしき、ビールを渡した。
「ありがとよぉ」
と、タブをあけると、泡が思いっきり噴き出してビールがこぼれていく。
「ふ、ふりやがったな!」
「仕返しよ! この私をこき使うなんていい度胸してるじゃないの!」
「ぐっ……手がべたつくんだぞコラ……」
そういいながらビールを飲み始めたのだった。




