熊と対峙!
クレイジークレイジーを後にし、私たちは早速フィールドにかけだしていた。
先ほど選んだ武器の使用感を確かめるために。ワグマはこのゲーム内でも金銭感覚がマヒしているのか、一番高ランクである武器をそれぞれの属性と状態異常付与のを一本ずつ買っていた。金の使い方がおかしい。
で、ビャクロはというと、投げが強くなる達人の帯というものだった。
基本大型モンスターは投げれないほどでかいので意味ないと思っていたが、どうやら投擲にも作用されるらしく、何かを投げたら威力が増すらしい。
意外とビャクロにぴったりの武器だった。帯が武器ってちょっとよくわからないけど。
「パンドラは武器買ってないの?」
「うーん。まあ基本魔法になってるし物理もナイフで充分だし」
基本搦め手の私は剣など使わないのだ。
「真正面からやり合うわけがないから剣とか近接武器は必要ないんだよな」
「それもそうね。あんた真正面から戦うと結構弱いものね……」
「うん」
正々堂々真正面からぶつかるのは無理なのだ。いや、できるっちゃできるが、前も言ったようにアドリブに近い戦い方になるため少し……ね。現実でも運動神経ないから攻撃とか基本避けれないし。
ビャクロは私の真逆でアドリブに強い。むしろアドリブが強い。野生の勘とでもいうべきだろうか。
「まあ雑魚敵と戦う分には勝てるならいいんじゃない?」
「まあ結局そうなんだけど」
大型モンスターは罠にハメて戦うのが私だし水魔法の威力が強いので魔法がいいって言うね。
「お、あそこにいい練習相手がいるな。私あいつで練習してくる」
「あれって……」
茶色い体毛で四足歩行。ちょっと図体がでかい。
あれって。
「クマじゃねえか!」
「あれ魔熊っていう魔物ね……。Cランク指定」
「意外と高い」
「パワーとスピードがあるわ。その分魔力がないんだけど」
「完全に物理アタッカーなのね」
ビャクロは熊と対峙する。
なんか金太郎? これクマと相撲とる流れじゃないよね?
魔熊はその丸太みたいな太い腕を振り上げると、ビャクロはその手を掴み「せえええええい!!」という掛け声をあげ、一本背負い。
熊すら投げれるんですね……。金太郎かな?
「グガッ」
「ほう、悪くない」
地面に叩きつけられた熊はよろよろと立ち上がる。お互い睨みあっていた。それはまさにカウボーイの決闘みたいで「抜きな。どっちが素早いか試してみよう」ってやつかな。
ビャクロと熊はお互いに目をそらさない。
先に動いたのは熊だった。でかい図体のわりに素早く走る。ビャクロの懐に潜り込んだ。だがしかし、ビャクロは避けもせず、真正面からぶつかっていく。
お互いの体がぶつかり合った。
「ぬぎぎぎっ!」
「グルアアアア!」
と、相撲のように押し合っている。
熊ももちろんすごいんだがビャクロの馬力よ。動かされてないって相当力あるんだな……。現実補正でもかかってるのかね。
「はあああああ!」
と、ビャクロが押していき、そして、熊を掴んで地面に叩きつける。
熊はピクリとも動かなくなったのだった。そして、ポリゴンと化して消えていく。
「ふぅ。なかなかいい相手だった」
「あんたクマと張り合うのね……」
圧倒されていたワグマの口から出た感想がこれだよ。




