応援してますから
別室に連れていかれ、親方に睨まれる。
親方は意外にも女性だった。
「で、魔王軍が私のクレイジークレイジーに何の用かしら」
「単に武器を買いに来ただけですよ。同じ武器を使い続けるってのも飽きてくるもんで」
私は笑顔でそういうと、隣から胡散臭い笑顔と言われていた。
聞こえてるぞ。こんな優しそうな笑顔ないじゃないか。ん?
「はっきりいって、街を壊すようないかれた奴に売るものはないわ。お引き取り願えるかしら」
「いかれてるっていいますけど、それはあなた方の主観でしょう? 私はいかれてなんかおりませんからね。私の主観ですが」
「そうね。たしかに主観よ。だけれど、あなたたちの場合主観的も客観的もどちらも同じになるのではなくて?」
「これは一本取られたかな」
たしかに周りもいかれてるとは思っているだろうしな。
別にこの程度で論破できるとは思ってない。相手だって腐っても経営者だ。それくらいの口と頭が回らなければやっていけないだろう。
いや、まあ、別に私経営者じゃないんだけどね。
「だったらこういうのはどうです? 私たちは魔王軍としてではなくて、個人で買いに来た、とかは」
「所属しているのは魔王軍だしどう考えても無理」
「だよね」
魔王軍としてじゃなくても無理だとはわかってたけどね。
するとその時部屋に誰か入ってくる。ジンだった。ジンは部屋に入ってくると私のところにやってくる。そして、よっと手を上げた。私も上げる。
「ジン、なぜそんな仲いいのかしら」
「マクロ。そこまで悪い奴じゃねえよこいつら。案外気さくだしな」
「ジン素材取りに行ったんじゃないの? ってか親方には言うとかいってなかった?」
「案外早く終わったんだよ。それに今日来るとは思わねーじゃねえか。後日来ると思ってたんだよ」
「そう?」
けらけら笑うジンにちょっと親しんでる私。
それをみてマクロという親方はため息をつく。
「はぁ。ジンがいうんならいいんでしょう。何が欲しいんです?」
「お、わかってくれた?」
「ジンはバカだしあほだけど人を見る目はあると思ってるの。ジンが言うんなら間違いないわ」
「あっ、ああ~。もしかしてす」
そこまでいうと親方は私の口を塞いできた。
珍しく取り乱して顔を赤くしている。なんていうか、結構青春してるなぁって感じがする。人の恋路って結構甘酸っぱいよね……。
結構な信頼を得ているってことはリアルでも付き合いがありそうだしな。で、カマかけてみたら本当に好きらしい。
「そ、それ以上言わない! わかった!?」
「わはふぃふぁひは」
口を押えられた状態で喋ったためになんか変になった。
私がそういうと口から手を離される。
ワグマとビャクロはあまり察してはいないみたいだしジンにいたっては頭にはてなマークが浮かんでそうな感じで首をかしげている。
ワグマとビャクロはこういうの気づかなそうだもんな。人をよく観察しろ、だぜ。見るんじゃなくて観ることって承〇郎さんいってた。
「じゃ、武器選んでもいいんですよね?」
「ええ。構わないわ!」
「ありがとうございます。あと、応援してますから」
「……っ!」
「おう! クレイジークレイジーを応援してくれよな!」
ジンは別の意味で捉えたらしい。そういう風に捉えさせたからな。この様子だとマクロさんの気持ちには気づいてなさそうだな。




