リーゼントヘアーの男性
武宮兄妹が帰り、再びゲームにログインする。
珍しく余裕ができたとワグマが言っていたので三人で街に行くことになった。
「それにしてもおねしょって意外と可愛い理由で泣いていたのね」
「ま、仕方ないだろうな。私も小さいときはよくしてたしな」
と、三人で会話していると、思わず人とぶつかってしまう。
白露が人とぶつかってその人は派手にこけてしまったのだった。
「兄貴ぃ!」
「てめえ! なにしやがるんだ!」
転んだ男はそういって派手に怒っていた。
いかつい男性。プレイヤーだ。頭はリーゼントヘアーでサングラスをかけている。絵に描いたようなチンピラだった。今時リーゼントって時代遅れも甚だしいと思うんだけど。
今の暴走族も不良もヤクザもリーゼントなんてしてねーぞ?
「すいません、不注意でした」
「お、おう。ちゃんと謝れるんならいいんだが……」
「イマドキ自分は悪くないあんたが悪いっていう若者多いですもんね」
「そうだ。今の奴らはジコチューすぎるんだ」
見た目に反して真面目そう……。
リーゼントヘアーの男性はよっこらしょっと立ち上がっている。
「あんたら案外まじめな若者だな。俺はジンだ」
「何この手」
「何ってみりゃわかるんだろ。握手だ」
真面目か?
私たちは手を差し出す。
「あんたら気に入ったからな」
「兄貴が気に入る!?」
「明日は槍が降るぜ!」
「うるっせえなあ!」
そう怒鳴る。
真面目だけど結構短気なのかな?
「私たちも紹介しておくと私パンドラ、こっちワグマ、こっちビャクロ」
「……パンドラ? どっかで聞いたことがあるな」
そらそうだ。
自信があるっていうほどではないが結構有名だと思う。これは自信じゃなくて誇りですけど?
「兄貴、パンドラ、ワグマ、ビャクロっていやあ魔王軍じゃないですか! 親方も関わるとやべえって言ってる!」
「魔王軍!? なんで街にいやがる!」
「いや、普通に観光って言うか、買い物?」
「なんだと? いや、ちげえな。魔王軍が訪れたら街は終わるって言うぜ? なにか企んでるんじゃねえのか?」
「どこまで信用ないんだ私たち」
「大幅あんたのせいよ?」
「というか、全部だな」
ひどくない?
ワグマたちだってこういったことを考えて……ないな。全部私が考えてるもんな。
「残念だけどなんも企んでないって。これはわりとマジで」
「ふむ……。そうか。ならいいさ」
「で、ジンたちは何してんの?」
「今から素材を取りに行くとこだ。俺らの店で使うようのな」
「へぇ、ガタイの良さからして鍛冶屋? 店って」
「おうよ! 俺ァ素材班のリーダーを任されていてな! 作る方にはあまり関わっちゃいねえんだが俺らの店は品質も最高だぜ! ぜひ買ってけや!」
「いいの? 魔王軍だけど」
「魔王軍がもし悪いことすんならそう尋ねてこねえだろ? いいぜ。親方には俺が言っとくから」
そういうんなら買っていこうかな。
「ちなみに店の名前は”クレイジークレイジー”つうぜ! 常連はCCって呼んでるがな」
「狂ってる狂ってる……。反復法かな?」
「はっは。親方がかっけえとおもってつけたんだ。文句言うな」
直訳するとダサくなるって言うのは英語が書かれたTシャツだってそうなんだし仕方ないさ。かっこいいものいいで書かれてる奴ほど違う言語じゃダサくなるし。
いいことを言うっていうのは着飾らないことなのさ……。
「パンドラ、そろそろ私らも武器変えたいわ」
「飽きてきたな。もっと別の性能のが欲しい」
「はいはい。じゃ、行くよ。お仕事頑張ってねー」
「おうよ!」
ジンからフレンド申請が届き、別れる。
「強烈な人だったわね」
「そう? 案外普通じゃない?」
「あんたの価値観おかしいわよ」




