新居で祝おう(準備編)
運び込まれていくのはというか、運ばれてきたのは自転車と車だった。
車!? まじで!?
「これ、新居祝いよ」
「まじで!?」
「これがないと通勤とか不便でしょう?」
家の前にずどんと置かれたのは結構高そうな車。
でけー。やべー。月乃気前良すぎない? 私ようにチャリも買ってくれてるし。このチャリもママチャリじゃなくて普通のマウンテンバイク。
いや、自転車乗れないわけじゃなくてよかったけど。運動音痴といっても自転車は乗れるもんね。小さいころめちゃくちゃ怪我しながらも頑張って乗れるようになった。あの転んだ時に出来た膝小僧には思い出がある。
「というか、もともとパン子チャリ通でしょ?」
「そうそう! うっほあ! サンキュー!」
そういって私は月乃に抱きついたのだった。
「ちょ、ちょっと……」
「う、羨ましいぜ……自転車……」
「あら、あなたも欲しいの? なら欲しい自転車言ってくれれば買ってあげるわよ」
「金持ちこえー!」
これだって数万もする奴だと思うし、車も結構高かったはずなのに……。
金持ちの金銭感覚ってどうなってんの?
「ま、それはあとね! 今はとりあえずパーティーしましょう!」
「おっし、私料理作ってやるから待ってろ」
「ま、その前にとりあえず買い出しね。食材ないと始まらないわ」
というわけでスーパーにやってきたわけだが。
「お」
「げ」
「あ」
「奇遇だね」
と、武宮が弟たちを連れて買い物をしていた。
「あー! ゲームの~」
「一目でわかったってすげえな。髪色とか違うはずなんだけど」
「わかるもん!」
と、武宮の妹が私に駆け寄ってくる。
この妹ちゃんと人を見てるな……。髪色が違うから他人の空似かなとか私思うけど……。身長もロリ体型だし……。よくわかったな。
すると、撫でてほしそうに頭を差し出している。
「え、えっと、よしよし?」
とりあえず撫でると、嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「お、お名前はなんていうのかな?」
「武宮 夢生です! みんなからはむーちゃんって呼ばれてる!」
「むーちゃん……」
「はいっ!」
「え、偉いね自己紹介出来て。私は夢野 眠……。みんなからはパン子って呼ばれてるんだよ」
「パン子ねちゃん!」
ねちゃん……。舌足らず。
「パン子さんに既に懐いたようだね」
弟さんのほうはずっと武宮の後ろに隠れていた。
「あの子供にも容赦しないパン子に懐くだって……!?」
「友達じゃなかったら絶対に近づきたくないランキング第一位の!?」
「おい、二人とも。私に舐めた口聞くなよ。報復したくなるから」
「「ごめんなさい」」
まったく。天使のような可愛さと慈愛の心を持った私に近づきたくないって……。こんな高根の花なかなかいないぞ。
見た目は一応いいからな。クマがあること以外は結構可愛いと自負している。いや、生活は女子らしさもないけどな。
「それで武宮は何買いに来たの?」
「えっと夕食の材料かな。母がいないんだ」
「おでかけしてるのー!」
「父と二人で今更の新婚旅行してるんだ。一週間は戻ってこないんだよね」
「武宮がいるから安心していったんだなー」
妹たちの世話は武宮が見るんだろうし。
「なら今晩うちで食ってく? 私料理得意だし」
「いいの?」
「武宮が作るような男料理より女子である私が手料理ふるまったほうがおいしいって」
「うん、我ながらあまり上手とは言えないかな……。そういうんならお言葉に甘えさせてもらうよ」
「むーちゃんたちもくるよねー?」
「いくー! 私から揚げがいー! にーに揚げ物しないー!」
「弟さんは?」
「は、はんばーぐ……」
から揚げにハンバーグね……。
「そんなにいいの?」
「いいよ。どうせ今日新居祝いで騒ぐところだったし品目増えるぐらい何とも。まだ何作るか決めてなかったし」
「新居できたんだ。おめでとう」
「ん。武宮は何がいい? いや、全員武宮か……。甲地はなにがいい?」
「……え、えと、じゃ、じゃあナポリタン」
ナポリタンか。ナポリってつく癖にイタリアで作られたわけじゃなく日本で作られたあのスパゲティか。
うおおおおポケモンが俺を呼んでいるうううう




