新居が出来ました
時は現実。
私は、自分の家にいた。
「うっほあああ! 新居だああああ」
一度ぶっ壊れてしまった我が家が新しくなっていた。
前よりちょっと広くなっている。相手の会社のほうからどんだけひねり出したんだ月乃は……。家具も一式そろえてくれてるし私が持っていた漫画も一式揃ってる。
うわー、気前いいなー。
「リビングひっろい!」
「そうかしら?」
「おい、月乃。そうかしらじゃないの。あんたはお嬢様だから感覚がマヒしてるだけで世間一般でいうとこれはでかいの」
たしかに月乃の家に比べたら何倍も小さいよ?
一応言うが私は庶民だからな? たいして裕福ってわけでもないし。本当に暮らしはごく普通なもんだ。親が共働きでほとんど家に一人っていうこと以外は普通の家庭なのだ。
「私の部屋ベッドついてる! 敷布団だったのに!」
いや、ベッドはもともとあったわ。テンションがおかしくなっているわ。
でも新居独特の香りがする……。新しいものって結構興奮するよね。トイレも結構よくなってるしなんといっても風呂ひっろ!
前はシャワーなんてもんは壊れかけてたし浴槽も私が足をのばせないってぐらいには狭かったけどひっろ! 足伸ばすなんて余裕じゃん!?
「ほう、風呂広いな。前のパン子の風呂とは違うな」
「わかるしょ? やっべえ、全体的に広くなってる」
「少し広くなるように隣の空き地も買って広げたって言ってたわね」
「最高かよ」
「庭も……広いな。手入れが大変そうだ」
「うっ」
「なんだ?」
親がいないってことは庭の手入れって……私がやるんだよな。
やりたくねえなぁ。雨降った後とか最悪なんだよなー……。いや、今度からは叔父さんもできそうだけど。休み貰えてるし。一週間に一回は。
前は一週間に休みなんてほとんどなかったし、一か月に二回くらいだったかなー……。毎日残業で休みなし。そらぶっ壊れてぶっ倒れるのも仕方ないってぐらいには働かされていたし。
「やっぱ庭広いのダメだわ」
「……パン子のことだから手入れしたくないのよね?」
「こんだけ広いのをやりたくねー」
かといって業者に頼むのも何かなあって感じがする。特に庭にこだわりはないため基本草むしりぐらいなんだけどね。草むしり……。だっる。
なんで華の女子高生がぶちぶちと庭の草むしりをしなくちゃならんのか。
「武宮君と私と白露を呼べばいいじゃないの。白露なんか体力に上限ないわよ」
「おう、任せろ」
「その手があったか!」
というかナチュラルに武宮の名前出したな? やらせたいだけだろあんた……。
「草むしり問題もこれで解決したわね? じゃ、あるもんを運び込むわよ?」
「あるもん?」
月乃の合図で何かが運び込まれたのだった。




