死して尚、その生は忘れられず ②
俗に言う死神みたいな風貌をしたやつが目の前にいる。
なにこいつ…。そんなのはやらないって。
「クククッ! また生者がやってきました!」
「ねえ、こいつ結構頭おかしいわよ」
「なんとなくわかる」
私はとりあえず先制攻撃した。
私の水魔法は幽霊にあたり、結構HPをえぐり取った。わあ、クッソ雑魚いじゃん。余裕でしょ。
ただ意外なダメージの量に驚いたのか、その死神みたいなやつは鎌を構える。
「あんた! 人間じゃあねえ!」
「あはは。バレた?」
「さては! 神の一族だな!」
「正解」
逃げようとしたので、アップルに止めてもらう。
アップルも死霊姫。結構高ランクな魔物なので、止めるのは結構容易いみたいだ。まあ、低ランクの魔物っぽいから討伐も余裕だろうよ。
私はまた、魔法を放つのだった。
「ああっ! ああっ!」
幽霊は消えていった。
なぜそこまでして人を殺したいのかがわからない。人を殺してもなんも得なんてないのだ。快楽殺人鬼ならまだしも、人を殺して快楽を得るなんてことはまずない。
人殺しをして得られるのはなんもないのだ。
よく頭がおかしいとか言われるが、違うんだよ。
私は狂ってなんかいない。殺人をして何も思わないわけがない。ただ割り切ってるだけなのだ。敵だと認識して、ただ殺してるだけ。
殺すことに意味を見出してはいないよ。
「まったく、人殺しのなにがいいのやら」
私はそう言いながら先へ進んでいく。
ある部屋に入ると、それはあったのだった。
「これが月のかけら……。月の魔力が凝縮されて出来た魔力の結晶体だったかな」
「綺麗ねえ」
薄紫色の水晶体。
月の魔力がこもっているらしく、なんていうか、神秘的で幻想的。なんていうか、アメジストっぽい色ではなく、ヴァイオレットモルガナイトという宝石に近い。
月にかざしてみると、月の文様が浮かんでくる。
「……ッ!」
「どうしたの?」
「これ、やばいわね。うっかり見惚れてしまったけど……。なんていうか、危険な感じがするわ」
「ほう? もしかしてこれがああいう凶暴なっていうか、ああいう幽霊を生む原因なのかもしれないな」
魔に見初められてしまうのかもしれないな。
私はアップルが狂暴化しないうちにとりあえずしまう。月はどうやら魔を見出す能力があるらしいな。陰湿なことをするもんだ。
だから隠れているのかもしれないな。月の半分は。
太陽は私たちを照らしてくれるが、月は私たちのあるべき姿を映し出す……のかもしれないな。
「だから消えないわけだ噂も……」
月の魔力がもともと濃い場所なのだろう。
定期的にああいう月のかけらができてしまうためにあんな風な幽霊も増えてしまう。要するに月をどうにかしない限りこの洋館の幽霊は消えたりしなさそうだな。
「なるほどね……。無限ループってわけか」
素材の枯渇には困らないな。




