王の玉座に座るは望まぬ兄 ②
私は王に変装し、玉座に座る。
そして、臣下を集め、私は宣言した。
「これより王位をレオンに与える! レオンは若いが民を想う王になるだろう!」
そういって私は王が言ったということをでっちあげた。
王の姿、王の声で宣言したことにより本当に王だと思うはずなのだ。全員信じただろう。認めたくないような者もいるようだが。
だがしかし、反論は許さない。異論も認めない。
「何より、レオンが望んだ玉座である! 不満があるならばぶつけるがよい! 我が息子レオンは解決してみせようぞ」
「はっ」
「レオン。頑張るのだぞ」
レオンに王冠をかぶせる。
レオンは王杖をもって、玉座にゆっくりと腰かけた。これだけの証人、これだけの人で急ピッチに王位譲渡式をやったんだ。
嘘でしたなんて言うと王家に対する不満が一気に爆発するだろう。ただでさえ忙しかったのに告知もせず式を上げたっていうだけでも不満がびっちりなのだ。
「余が王になったからにはいい方向に導いて見せる」
とだけ決意表明をしたのだった。
すると、バンッと勢いよく扉が開かれ、丸裸の王が現れたのだった。本物の王だ。王は私を指さしてくる。
「そいつは私の偽物だ! 捕らえよ!」
「ほう? 私を偽物扱いすると。観ての通り、私が元王であるぞ?」
「嘘をつくな! 何をしている! ひっとらえよ!」
「そちらこそ何をしている! 兵士、あの神聖な王位譲渡式を邪魔する悪者はひっとらえぬか!」
兵士は本物の王を捕らえる。
王は暴れるが、私に対して暴言を吐きまくっていた。私を敵に回した時点でダメなんだよ。その気になれば王位を乗っ取るなんて余裕なんだからさ。
騒ぐ元王がいなくなったところで式は続くのだった。
私は牢に降りていく。
変装を解き、こつんこつんと石階段を下りていった。
「貴様っ!」
「あはは。どう? 私の演技は。そっくりだったでしょ?」
「王に成り代わった罪! 極刑だ! 極刑にしてやる!」
「やれるもんならやってみなよ。元はと言えば、アデュランがやった行為に対する報いだからね」
「報いだ? あいつは私の側室を殺した。王族の関係者を殺した時点で死刑は免れぬ。どこが悪い?」
「その判断は正しいんだけどねー。ただ、それはあくまで結果だけを見てるに過ぎないんだよ」
確かに世の中結果がすべてだ。結果が物を言う。
だがしかし、真偽も確かめずただがむしゃらに死刑などと決めていいわけがない。だからこそ、私はここまで協力したのだ。
もしもきちんと真実を把握したうえでの判決ならばここまでしなかったさ。
「ま、ヤったあの側室が悪魔だったって気づかないぐらいには愚鈍な王だからこの結末が正しいのかもしれないね。乗り込んできた半裸の姿は裸の王様だったよ。文字通り。いや、今は王じゃないか。王に変装した暗殺者さん?」
表向きにはそうなっている。
のちに殺されたっていうことにしておくさ。上手くつじつまは合わせるとして……。
「な、なぜレオンに協力した! お前には協力する理由がない!」
「うーん、あるよ。少なくとも、あのユリベルを殺したのは私も大きくかかわっている」
「は?」
「実は殺害計画を持ち掛けたのは私なんだよね。もちろん理由ありきだけど。私理由ない殺人はしないんだ」
そういって、私は牢を後にしたのだった。
あとはあの王が自分で考えろ。
やることは結構えげつないパンドラさん。




