王の玉座に座るは望まぬ兄 ①
その日、私はレオンから相談を受けていた。
「一刻も早く王になりたい?」
「ああ。どうしたらいいだろうか」
と、真剣な目つきで聞くものだから私は思わず息をのんでしまう。
今すぐ王になりたい、そう言われても困るものは困るのだ。だがしかし、理由を聞くと、やはり私も関わったあの一件がきっかけでアデュランは牢に幽閉されているらしく一刻も早く出してしまいたい、そういうことだった。
さすがに私たちがやったことなので見てみぬふりもするわけにはいかず、私は協力するという。
「ありがとう。今の王を引きずり下ろし、私が王になりたい」
「うーん。そういわれても、国っていうのは結構難しいからなぁ。ワグマだって本来なんとか帝国だったところの統治をしなきゃいけない立場だしそれで結構苦戦してるんだよな」
以前に潰したあの国。
統治者がいないので私たちが代理の統治者となっているが、私たちに対する信仰度が異様に高くなってしまったので新たなリーダーを作るにも問題がある。
だからこそ厄介なのだ。ニホンに任せるわけにもなっていうこともあって。
雪合戦してる暇じゃないんだよ。本当は。
「そんなに弟が大事なら連れ去ってしまえばいいのに」
「それだと……私に属してくれた王城の方に申し訳がないのだ……」
「律儀なやつ」
私なら連れ去って遠くに逃げるけど。
あとのことはなんとかしてくださいってことで。だがしかし、それを望んでないとなると……。うーむ。あの王をどうにかして引きずりおろさないといけないっていうことだ。
また無理難題を吹っ掛けてくれる。国を潰さずに一人の統治者を下ろすっていうのも大変なんだぞ。
「んじゃ、暗殺でもするか」
「なぜそうなる!?」
「今の王が死んだら次期王はレオンでしょ。さて、どうやって病死したように見せかけるか……。毒は固有の症状があってみる人が見たらすぐわかるし、階段で転んで死んだとか事故に見せかけたほうが……」
「待ってくれ!なにも殺したくはない!」
「文句が多いな。人を殺さずに王なんて名乗れるかっての。王っていうのは血の上に立ってるんだぜ?」
国民の血税の上に、他国の兵士の死体の上に。
そういうもんなのだ。今の国があるのは昔の王が人殺しをしたからだ。
「あれでも一応は父親なのだ……。その、実の父親を殺したくはないっていうだけで」
「そっか。なら仕方ない」
実の父親っていうことを忘れていた。
レオンの場合異母兄弟っていう感じだから父親は同じなんだよな。まあそれもそれで結構複雑なと思うけど。
側室の子だから本来王位継承権は薄いけど、アデュランが幽閉されているってことは王位継承権は剥奪、強制的にレオンが王位を継ぐことになる。
ゲームなのにストーリーがよくて腹立つ。
王位継承権とかよくある王道だけどたしかに複雑なんだよな。ちょっと燃えてきた。ただしこの国はマシだと思う。
ほかの国だと王子たちの蹴落としあいがあるだろうしな。兄弟仲がよく、レオンはアデュランが王になることを認めていた……。だからそんなギスギスはしていない。
むしろレオンはアデュランが王位に立つことを望んでいただろうしな。
「じゃ、今から王位につくか」
「ど、どうやって?」
「単純。蹴落とそう」
案外、玉座に座るのは簡単なのだ。




