戦争の終結
ビャクロが目の前にいる。
私は身構えると、突然タケミカヅチが何かを言い出しそうに考えている。ビャクロはその隙を見逃さず、タケミカヅチに雪玉を当てたのだった。
「何ボーっとしてるんだタケミカヅチ!?」
「いや、ごめん……。ちょっと考え事を……」
「勝負の最中だぞ!?」
「ご、ごめん! 本当に!」
まったく。
勝負の最中に考え事とは……。
「何考えてたの? エッチなこと? ×××とか?」
「女性なのによくそんなド直球にいえるな……。いや、パンドラさんのことで……」
「私?」
私がどうかしたの?
「パンドラさん、いつの間にか俺を呼び捨てするなって……」
「え゛っ」
「え、何その驚いた顔……。もしかして、無意識?」
えっ。
マジで? 呼び捨てにしてた? そんな記憶は一切ないんだが……。うーん、記憶がない。デモ呼び捨てにしてた?
無意識に?
「隙ありだ!」
「あっ、まずい」
ビャクロが放った雪玉が私の顔に直撃したのだった。
その翌日、雪合戦に負けたペナルティとして参加した全員分の飲み物を買ってくるように命じられたのだった。
月乃がブラックコーヒー、ビャクロは水、武宮がお茶で花園君がコーラ、久木山さんがサイダー。
私は五本手に持って教室に戻るとなにやら珍しく月乃と武宮が会話しているのが見えた。
「おーいなにはな」
「パン子が武宮君を呼び捨てに? 何かの間違いじゃない?」
「そういうものか……?」
「でも、あいつが間違って呼び捨てにするはずないわよ」
そうだよな。
なんで私武宮を呼び捨てにし始めたんだろ。無意識のうちで呼び捨てにしちゃってる気がする。いつからかは知らないが。
「ま、友人認定おめでとさん」
「友人認定?」
「気づかない? パン子、よほど親しくないと呼び捨てにしないわよ」
え、そうなの?
「多分本人は無意識だけどね。でも、呼び捨てにされるってことはもう十分親しくなったっていうことよ」
「私まだ呼び捨てにされてない!」
「まあ、交流が足りないのよ。パン子結構というか、一線引いてるから」
……自覚がない。
え、まじで? そんなに一線引いてるの? 自覚がまるでと言っていいほどないんだけど。
「昔いろいろあったからそれで人を信用しなくなってるの。ある程度の愛想は振りまくし優しさも振りまくけど……。でも、信用はされてないわね」
「……そうなのか」
「基本自分のための頼み事は友人である私と白露にしかしないわ」
「そうなのか……」
本人自覚ないんですけど。
そうなの?
「それに、有栖川さんとかさん付けするでしょ? でも私たちされてない。呼び捨ては一種の信頼してる証なのよね」
「……私も信用されるために頑張る!」
「健気だなぁ。あっちで本人聞いてるぞ」
「気づいてた?」
月乃と武宮はぎょっと私を見る。気づいてなかったの?
「で、さっきの話だけどそれってマジ? え、私呼び捨てにするのが信頼してるかしてないかの証なの?」
「無意識だったのか!?」
「うん。聞いてても思い当たる節あるけど素でやってない……」
きっと意識の奥底でそういうことにしているんだと思うけど……。
でも意外な発見だ。私って結構無意識のうちでそういうことしてるんだ……。




