魔王城の司書室
ワグマが魔王になって、私はどういう役職を与えられるんだろうかと思った。
司書らしい。パンドラにはそれがお似合いだろうとワグマに言われた。よくわかってるじゃないか。正直、読書のほうが好きだ。宰相とかそんなんよりも司書のほうが落ち着く。
魔王城の司書室を与えられて、私はそこに引きこもることにした。
本というのは先人たちの遺産であり、大切にするべきものだ。
私は本を書ける人はすごく尊敬する。漫画でも、ライトノベルでも。エロ漫画でもなんでもだ。マンガだって書くのには知識がいる。ライトノベルもそうだ。
本というのは知識だ。ライトノベルというのは知識をひけらかすような本だ。
知識。なんて甘美な響きなんだろう。
「パンドラ。レベル上げに……って、まだ本を読んでるの?」
「この一室を与えたのはワグマでしょ?」
「そうだけど……。っていうかその分厚い本。なにそれ」
「これ? この国が崇拝している宗教の教本」
「そんな分厚いのその教本……」
「正直読むのお勧めはしない」
この教本に書かれていることを纏めてみると。
・主神アヴァロンを崇拝しろ
・人間が一番素晴らしい
・人間以外は総じて劣等種
とまぁ、人間至上主義。いや、悪くはないんだけど、長々とそんな内容ばかりでとてもつまらない。本は知識だが、この本は知識を習わせるというより植え付けるというほうが近いかもしれない。
読書してて読むのやめたいだなんて初めて思ったわ。広辞苑ですら嬉々として読めたのに……。
「貴方をもってしても読むのお勧めしないってどんだけひどいのよ」
「書いてる内容が一辺倒だし。もうこれ読むんじゃなくて鈍器として使うほうがいいよ」
「もはや本の用途ではないわね……」
正直アバロン教というのだが、そのアバロン教はやばい匂いしかしない。
魔王がそんな宗教とかかわることはほとんどないし、敵対するだけなのでこの教本は正直いらないといえばいらない。
というか、もういらない。
「昔から宗教って苦手なんだよ私」
日本人って無宗派が多い。
というか、神に縋ってる暇があるなら仕事しろっていうのが日本人だしな。神様が幸福をもたらすより自分たちで働いて幸福を掴みとるほうが早いからね。
せっかちだな。
「ワグマは宗教好き?」
「どうでもいいわよ宗教」
「だよね」
「というか、日本人そうでしょ大体」
「クリスマスとかやるくせに神社行くからね」
クリスマスはキリスト、神社は神道。
神社といえば巫女さんというイメージが強いのはなんでだろう。
「それはともかく。レベル上げするわよ。魔王になったのに低レベルっていうのはまずいわ」
「それもそうだ。で、ビャクロは?」
「デュラハンと稽古してる」
「それに混ざる感じ?」
「賢者たちに教えてもらうのよ。貴方はエルフのサユリよ。同じエルフ族」
私はダークエルフだけどね?




