さあ、私と一緒に踊りましょう ③
怒りに怒ったビャクロを見るのは小学生以来だろうか。
あまりにも怒りすぎたビャクロは、前が見えなくなるのだ。敵を倒すか、自分が倒されるか。だからこそ厄介であるからして。
私もそんなビャクロと真正面からやったら負ける。
「逃がさないぞ」
ビャクロは腕を掴み、そのまま一本背負い。
地面に受け身も取れず、痛みをこらえている彼女。逃げようにも痛みが邪魔をして思うように動いていなかったのだった。
そして、ビャクロは首をへし折ろうとエルボードロップをする。容赦ねえからな。三人の中で怒っても容赦しないのは意外とビャクロなのだ。下手したら相手が死にかねない。
「私はよ……お前みたいな他人を利用して戦うやつは大っ嫌いだ。何も関係ない相手を巻き込んで戦わせるのはな……」
「……まあ、何も関係ない相手を虐殺してる私がいるけど」
「街の破壊、アストラ商会の破壊……。本来俺が会話してるのはおかしいはずなんだがな」
重罪度でいえば私も意外と負けてない気がする。
「うおっ! 油断してたぁ!」
「うぐぐぐ……!」
令嬢が押し切ろうとしていたので、とりあえず水のバリアーを強めた。
「このままあんたの首をへし折る。覚悟はいいな?」
「…………!」
すでに首にエルボーをやられて声が出ないのか必死に手を振って拒否している。
すると、令嬢たちの攻撃が止んだ。令嬢たちは自分たちが何をしたのかわかっていないようでアデュランの姿を見ると一歩後ずさりし、全員頭を下げていた。
アデュランは息を切らしている。
「パンドラ、なんて言ってる?」
「魅了は解いた。これで許してくれないかって感じじゃない?」
「そうか。解いたからなんだっていうんだ?」
もちろん、能力を解いたから許してもらえるっていうほど甘くはない。それぐらいで許せるビャクロではない。
ビャクロは彼女の首を掴み、思いっきり地面に叩きつけた。すると、彼女は、光を発し、そして塵となって消えていく。どうやら死んだようだった。
「ふん」
ビャクロは柔道の時と同じように装備をまた着なおした。
「何が起きたかわかりませんけど、アデュラン様どうしたのです!? その方たちはっ……!」
「彼女らは私の味方だ。恋人というわけではない」
「そ、そうなのですか? ですが……!」
「ユリベルはこの国を害していたものだ。始末するのは当然のこと」
「当然じゃありません! ユリベル様はッ……!」
何も知らないでそんなことをいう令嬢たち。どうやら令嬢たちの支持は得ていたらしい。人望があったからこそ逆に厄介ともいえる。
「さて、兄上にどう説明しようかな……」
「まだ説明してないの?」
「ああ。どうにも言い出せなくてな」
その時だった。
前方から音がする。そこには、木刀を手にしたレオンがそこにいたのだった。




