王子の複雑な気持ち
犯人が分かり、私は一応王子に報告していた。
「……兄上の母、だ」
「へ?」
「俺と兄上は母が違う……。兄上は側室の子なんだ。俺も数回しか兄上の母を見たことはないが……。間違いない。その側室……」
「……」
となると、レオンは……。
いや、よそう。レオンはちゃんとしたいい性格をしている。
「……兄上の母が悪魔だったなんて、信じたくない」
「…………」
「が、信じるしかないだろう。兄上にこのことを話したらなんていうだろうか」
レオンに……。それはもう取り乱すだろうな。
自分が悪魔が産み落とした子だなんて知るとどう思うだろう。冷静を装うだろうが、内心はとても動揺していそうだ。ましてやその母を倒されると知ると……。
悲劇の主人公だろうか。気の毒でしかない。でも、私は倒さなくてはならない。
いわばあの悪魔は毒だから。
「精神操作をしていたとなると、重罪だ。俺は裁かなくてはならない」
「……兄を敵に回してでも?」
「ああ。ほうっておくと俺が暴挙に出るかもしれない。知らないうちに精神操作されるかもしれない。不安は摘むしかあるまい」
「そうだね」
「兄上には誠心誠意謝るさ。だから……俺はやる」
と、決意をあらわにしていたのだった。
「じゃ、せめてもの情けとして真正面から堂々と勝負してやるか」
「ああ。頼む……」
アデュランは意気消沈としている。
自分としても複雑な気持ちなのかもしれない。自分の兄の母が悪魔だった、自分の兄が悪魔と人間の子だったなんて知ると……。
アデュランにかける言葉もない。アデュランは、兄に説明せねばならない。その気苦労は推し量れるものじゃない。
レオンもレオンで複雑だろうなー……。
「誰も幸せにならないなー……」
誰も幸せにならない事実だ。
だがしかし、放置しておくわけにもいかないだろう。わざわざ私が関わるようなことでもないけど、精神操作して私たちに攻撃を仕掛けさせたんだ。一応かかわりはあると言えばあるのか。
ま、あまり人の気持ちを考えて行動しない私でも流石に戸惑うものがあるさ。
特に、親に手を出すっていうのは私にはくるものがある。親を亡くしているからかもしれないが、あまり他人の親になにかするっていうのはやりたくないことだ。
ゲームでもそれは同じ。ただそれは割り切るしかない。
「こればかりはビャクロにやってもらおうかなぁ」
さすがに私はやりたくない。
たとえヘドロみたいなやつと戦えって言われても戦えるぐらいには結構メンタル強い私だけどね。人の親に対してはなにもできないのよ。
さすがに攻撃されたらし返すけど、攻撃も何もされてないし愛されている親を殺すのは気が引ける。
「決めた。私やらない。ワグマかビャクロに任せよ」
私はそう決めて、ビャクロたちのところに向かうのだった。




