精神操作系の魔法
今回は一段と短いけどキリがいいので…
王城に入り、そのことをアデュランに伝えてみる。
「邪悪な気配……。王城に何者かが忍び込んでいる、ということか?」
「だと思うけど……」
「仮にそうだとして、百年くらい前の出来事だろう? そいつはすでに死んでいるんじゃないのか?」
「相手が人間だと思う?」
「人間じゃないのか?」
「十中八九人間じゃない。精神操作系の魔法をかけられていたはずだからね」
精神操作系の魔法は人間には扱えない。いや、あるにはあるけれど禁術であるし、代償もあるらしいので迂闊に手を出すことはできないだろう。
だからきっと代償なしで扱える……悪魔あたりと考えて大丈夫だ。
「精神操作系の魔法となると、人間じゃないことは確実だが……。そんな邪悪な気配、俺が過ごしていても感じなかったような……」
「いや、一個だけ心当たりがある」
「え?」
「アデュラン。君は前に魔王を殺そうとしてたよね?」
「あ、ああ。たしかにそれは……ん?」
アデュランも疑問に思ったんだろう。
「なぜ俺はあそこまで魔王に恨みを抱いてたんだ?」
「そう、エレメルを送りこんだりとかしてた時ものすごく魔王を倒そうと躍起になっていた。でも、今の性格とは真反対だよね?」
どちらかというと今の魔王を恨んでいないというのが本質っぽい。
なぜあそこまで魔王に恨みを抱いていたのか。ずっと疑問に思っていた。
「でも好きになって魔王への恨みは一気に消えて……それって普通に考えるとおかしい。それに精神操作系の魔法をついこの間までされていたってことは…」
「そう。つまり、まだこの城内にいる可能性があるってことだよ」
そういうと、アデュランは黙り込んでしまった。
「このことは早急に解決せねばならない……! 手伝ってくれないか」
「もちろん。ただ、このことは誰にも話さないでね。あんた以外の全員が容疑者なんだから」
「わかっている。俺も独自で怪しいやつを探っていく。知らぬうちに精神操作をかけられていたとはな……」
「ま、そんなこともあるって」
ただ、それを知ってしまった以上、安心して暮らせないよねー。
相手が悪魔ならこっちだって悪魔を投入してやろう。同族ならきっと探しやすいだろうな。サルタンでも一緒に連れてくるか。
それにしても精神操作系の魔法を使う悪魔ねえ。どう考えてもろくなやつじゃなさそうなんだけど。




