ゴーストプリンセスは寂しがり
マラソン大会も終わり、帰ってゲームにログインする。
そして夜。私はカイハが発明した懐中電灯を片手にある屋敷に入っていくのだった。理由はというと、謎の手紙が届いていた。
夜の8時、この屋敷に訪れたしという、いかにも怪しすぎるものだが、面白そうなので来た。
「おーい、来てやったぞー? 姿を現せよー」
と声を上げても出てくる気配はない。
なんていうか、ル〇ージマンションを実際にやってるような気分だ。こういうホラー系は苦手じゃない。結構怖いもの知らずであるためにこういうのに怖がる私じゃない。
お化けより人間のほうが怖いからな。
「んー、やっぱり罠だったのかな?」
「そんなことはありませんわ」
すると、いきなり人魂があらわれ、その奥から誰かがやってくる。
半透明でドレスを身にまとった宙に浮く彼女。幽霊か。ふよふよ浮きながらこちらに近づいてくる。そして、私の目の前に来たかと思うと、私の頬に手を当てる。
私はただただ見つめていた。
「私に恐怖を抱いたかしら? 魔王軍の幹部であるあなたが」
「いや、別に」
「そう? 私を見る者は大抵恐怖して逃げかえるものだけれど。その姿を面白くみるのが趣味なのに」
「ひねくれた趣味だな」
敵意は感じない。
謎の手紙の主はこの人のようだ。この人? この幽霊? どちらでもいいか。
「まずは自己紹介をしますわ。わたくしは”死霊姫”のアップル。この屋敷には一人で住んでいるの」
「私は魔王軍幹部のパンドラ……。で、なんで私をこんなとこに呼んだ?」
「えーっと、この屋敷についてなのよ」
「この屋敷?」
この屋敷がどうかしたんだろうか。
「一人で住むのは寂しいし誰か同居人が欲しいのよね」
「ええ……」
「でも普通の人じゃ恐怖が勝ってビビるだろうし、胆力が強そうな魔王軍の誰かってことになったのだけれど……」
「誰かから私がいいよとか言われたな?」
「ええ。アガルギルド……だったかしら。人間なのに首がなかったけれど」
おい、あいつもアンデッドだぞ。
人間なのに首がないっていう時点で気づけ。
「だからこの屋敷に住んでほしいの。家財道具とかは自由に使っていいから! 一人で住むのは寂しいのよ」
「……はぁ。わかったよ」
「ほんとう? ありがとう。私も戦闘できるからね。まあ夜しか屋敷から出られないけれど」
「そうなの?」
「一種の地縛霊みたいなものよ。昼のうちはこの屋敷から出られないのよね。陽の光が強すぎて」
まぶしいからか。
たしかに昼に幽霊を見かけることはない。見かけるのは大抵夜とか早朝、陽の光が上らないころだ。幽霊っぽいといえばぽいな。
だがしかし、死霊姫、ねぇ。強さはいかほどなんだろうか。夜しか外に出られないという制約がある以上、結構な実力はありそうだけれども。
魔物図鑑でも見てみるか。たぶん載ってるだろう。




