ハッピーハロウィン! ②
月乃は赤いビキニを着ていた。
「はい、女戦士です」
「なんで私がこんな格好を……」
どこにこんな衣装があったのか。
単にひん剥いて白露があとできようと思っていたビキニアーマーを着せただけ。なんで白露そんなもんもってるかはしらないがミイラ男が装備を着る瞬間をやりたいと月乃が言ってたからもってきたらしい。
だが甘いな。
「うわ、お嬢様!」
「いけませんお嬢様! あー、いけません!」
「見ないでえ~!」
月乃は顔をおさえてしゃがみ込む。
なんかすっきりした。
「パン子スタイルいいな意外と」
「意外とってなんだ。胸以外はスタイルいいぞ」
「腹もくびれてるし……。運動あまりしてなさそうなのにな」
「食べても太らない体質だから運動しなくても問題なし」
「羨ましー……」
いや、男子が羨ましがっても。
筋肉つけろ。動けば筋肉つく。たぶん。
「私が悪かったわよ! パン子、白露ぉ! だから着替えさせて……」
「あと十分後な」
「ひいいいいい!?」
月乃だってわかってたくせに。
私たちを敵に回してただじゃすまされないと。わかっていたうえでやってたんだろう? やっぱり不公平はダメだしな。公平にいこうぜ?
「パン子さん。流石に可哀想では」
「いやいや武宮君。私だって行く前は滅茶苦茶拒否したんだよ? でもこの格好で連れてこられたんだから少しは意趣返ししたいじゃない?」
「自業自得……?」
「そゆこと」
だから私は悪くない。
「さて、腹が減ってきた。もうパーティ始めない?」
「主催者が恥じらいで潰れてるんだけど……」
「じゃ、私が代わりになるわ」
どうせ月乃がやるのは乾杯の音頭だけだしな。
「ハイ注目!」
私はグラスを持ち、声を上げる。
みんながこちらを向いた。私たちがやったことだ。尻拭いくらいはするさ。
「えー、主催者がつぶれてしまったから私が乾杯の音頭とりまーす! 今宵はハロウィン! 本来は秋の収穫祭みたいなものでこういって仮装してパーティをするのは子供の特権です! いや、まあ、本当は家を回ってもらったお菓子で開くもんだけど……。まあ、他所は他所、うちはうちってことで。仮装だって本来は違うんだけどね。まあいいや。腹減ってきたんでかんぱーい!」
かんぱーい!という声が聞こえて、みんなが料理に手を出し始める。
有名な料理店を貸し切るだけの月乃の財力もそうだけれど、見た目が滅茶苦茶豪華。一介の高校生が普段食べれるようなものじゃない。
本来今日だって食べに来る人がいるはずなのに、月乃が金に物を言わせて貸し切ったからな。
「俺こういう高級店に来たことねえ……」
「こういう店ってドレスコードあったりすんのかな? 仮装してきてる時点で結構特別な気がする」
「店全体の装飾も綺麗よね。阿久津さんよく来たりするのかな」
私も料理に手を出す。
ふかひれスープだってある。というか、ほとんど高級食材だ。月乃がいるってことで結構VIP扱いだったり。月乃って意外とグルメだから食材より味なんだけどね。
「ふかひれなんて初めて見たぞ? これ本物?」
「金持ちすげー……」
ここ貸切るのにいくらいるんだろう。
少なくとも百万はいってそうだ。
「ハロウィンってことでかぼちゃコーナーもあるな」
かぼちゃコロッケにポタージュなどなど。
ハロウィンすげー。
「ま、これもハッピーハロウィンってことで」
ハロウィンは静かに過ぎていく。




