暗黒街
私は今王子たちと一緒にある場所に来ていた。
アクアマリン大陸のある一部。そこは人が住んではいるが、とても住めるような環境ではないスラム。通称、暗黒街と呼ばれるところだった。
異臭を放ち、地面がごみで汚れている。
「ここが一番の我が国の問題なのだ……。毎年、予算を振ってはいるが整備された様子がない」
「着服されてるんでしょ」
「そうだろう。だが、着服してる証拠がない」
まあ、バレたくないからできるだけ隠すわな。
家の壁に触れる。少しべたついていた。アデュランは顔をしかめながら歩いている。嗅覚設定は一時的にオフにしてるので私は実害はない。プレイヤーって便利ですね。
だがしかし、これはひどいな。
「それで、私にやってもらいたいことって?」
「ここの清掃をしてもらえないだろうか。報酬は弾む」
「わかったよ。じゃ、とりあえず街の人を避難させようか」
こちらを睨んでくる獣人たちを避難させようとそちらに近づくと、ガルルルと威嚇されてしまう。
「ニンゲン、くるな!」
「ここはかつて獣人が暮らしていた里だったが、先祖がここに人間の街を建ててから獣人とはあまりうまくいってないんだ。だからこういうのが多い」
「あんたらのせいじゃん」
「それは返す言葉もない」
私はとりあえず怖くないよと言いながら近づく。
すると、奥から大人の女性が出てきたのだった。犬耳の若いお母さんって感じの。
「うちの子になにするつもりなの!」
「別になにも……」
「さ、攫おうとしたのね!? うちの子が可愛いからって!」
「可愛いのはわかるけど……」
どうにも話が通じそうじゃないな。
そもそも、この親子みたいに聞く耳を持たないっていう感じが多そうだ。正直言って無理ゲー。別に頼みを聞いてやる必要はないと思ったが、前に結構やってもらったから今更断るわけにもいかないしな。義理はきちんと返したいし。
「みんな! 敵よ! 敵が来たわ!」
「いったん逃げるぞ」
「あ、ああ!」
私たちは走って逃げだした。
どうやら獣人たちは人間に対する恨みが強いらしい。
そりゃ住処を追われ住処に街を建てられたら怒るだろうに。獣人には獣人の誇りというものがあったのに、多分先祖に踏みにじられたんだろうな。
歴史的に禍根が残っている。人間は悪だと教わってきたんだろう。
「予算も着服され、街があんな様子ではできそうにもないな」
「踏んだり蹴ったりか……。どうにかして説得しないと始まらないな」
まあこういうのは案外得意分野だ。
言葉で丸め込むことは可能そうだ。だがしかし、まずは聞く耳を持ってもらわないと話にならない。獣人の修正は本で読んだが、仲間意識が強く、結束力がとても高い。
ただ、縄張り意識も強いので縄張りを侵害するものは容赦しないという。
ふむ、どうしたものかね。
「とりあえず私たちは敵じゃないってわからせなきゃいけないか」
「どうやって?」
「それを今から考えるさ」




