お嬢様学校にいくお嬢様 ⑤
体育館で柔道の練習試合が行われていた。
体格がごつく、クマみたいな感じで顔も濃い。その男と白露が取っ組み合っていた。
「お前、いいところの坊ちゃんみたいだな。だが、手加減はするものか」
「いいだろう。元より、そんなのは関係ない! 勝負は全力で! それが俺の信念だ!」
「いい心がけだ」
二人が取っ組み合い、お互い相手の出方をうかがっている様子だった。
「熊島 五郎太……。熊島建設の息子さんね。吽神家が贔屓にしてるわ」
「吽神の父さんが父さんだからな」
「筋肉仲間と言ったところね」
吽神さんのとこも相当マッチョだからなぁ。
「さあ、どうでる? 掴んで投げるか? それとも足を払うか? お前の丸太みたいな足では私のか細い足などすぐに払えるだろう」
「俺はお前をよく知っている。お前は力で勝つというより技で勝っている。もちろん、力技もないわけではないが……。技の技術はあんたのほうが上だよ」
「「この勝負、一瞬のスキをついたほうが勝つ!」」
「何このスポーツ漫画みたいなノリ……」
私はそうつっこんでしまったのだった。
そして、先に仕掛けたのは白露だった。白露が足を払うがびくともしない。その隙をつくかのように胸を掴んだが、白露はそれを先読みしていた。
白露も掴み、そして、大きく相手を投げたのだった。
「一本!」
「払うモーションからすぐに投げたぞ……。一本背負いが決まったけど……」
「あれからすぐいけるとか本当に人間かしら」
「ふぅ」
白露が着崩れてしまった柔道着を着なおす。
そして、私たちのところにやってきたのだった。
「勝ってやったぞ」
「ま、よくやったわ」
白露と私たちは手を高く上げ、ハイタッチを交わした。
「あの部長が負けた……?」
「久々に手ごたえがある相手だった。試合、ありがとう」
白露が相手に近寄り、手を差し伸べる。
「ああ。女性なのにあっぱれだ」
「男尊女卑か?」
「違うさ。女性と男性では体格が違う。あんた、そんな細いのに筋肉あるな」
「見た目詐欺だってよく言われるさ」
熊島は白露の手を取り起き上がる。
「つっこまないでおいたんだけど男尊女卑の使い方違うよな」
「水を差すんじゃないわよパン子……」
「お互い気づいてないぞ」
「だから水を差さない」
時間も四時となったので私たちは月乃の車に乗り込んだ。
熊島と苑木が見送りに来ていた。
「都合がよくなったら連絡する。その時に都合がよければ教えてくれ」
「またやろうな! 俺はいつでも待ってるからよ!」
私は苑木と、白露は熊島と握手を交わしていた。
勉強のライバルができた感じだ。少年漫画っぽくてちょっとテンションが上がる。少年漫画の鉄則と言えば主人公と競い合うライバルだ。
うちの学校、ライバルがいないからな。
「基本私ゲームしてるか寝てるかだからいつでもいいよ」
「私もトレーニングと部活以外は暇だ。いつでもいい」
そういって、月乃が扉閉めるわよといったので別れの言葉を言って学校を後にしたのだった。
ライバルって素晴らしいなぁ。




