天才と天才とお嬢様 ②
阿久津が私を強制的に隣の小学校に連れていく。
校門前で球磨川を待っていると、ランドセルを背負って下校する球磨川が現れたのだった。阿久津は、私の腕を引っ張り、球磨川の前に立つ。
「あなた、球磨川さんよね?」
「そうだが、私になにかようか?」
「用……そうねぇ。公園でお話ししない?」
そういうので公園に場所を移すのだった。
公園のベンチに三人が座る。私は眠そうにあくびを一つしながら、阿久津の話を話し半分で聞いていた。自己紹介とかぐらいしかしてないけれど。
「単刀直入に言うわ。友達になりましょう?」
「友達ィ?」
球磨川が不思議そうな声を上げる。
そりゃそうだ。いきなり見ず知らずのやつに友達になりましょうとかいわれたら戸惑うのは当たり前だろう。私だって戸惑う。
球磨川の表情は見てないが、多分断るんじゃねえの?
「断る。大体、初めて会って友達というのがおかしいだろう」
「それもそうね。じゃ、みんなで遊びに行きましょう?」
「それも断る。これから柔道がある」
「一日くらいいいわよ」
「ダメだ。一日でもさぼると弱くなるからな」
一日でもさぼるとって私もなんだけどな。
勉強してえ。
「友達とか言うものに現を抜かしていたら柔道が弱くなる。そんなのいらん」
「そんな悲しいこと言わないの。なにかとお得よ?」
「なんだよその悪徳商法みたいな言い方……」
思わずつっこんでしまった。
「私にどんなメリットがあるんだ」
「メリットデメリットを考えてでしか動けないのかしら……」
「当たり前だろう。デメリットしかないのであれば付き合う義理はない」
そりゃそうだ。
デメリットの方が多いんであれば私だって友達にならないさ。私の場合ほとんど強制的にだったしゲームでいう強制イベントみたいなもんだったけど。
でもなぁ、別にここまで拒否することもないんじゃないか、とかは最近思うようにはなってきた。
「楽しいわよ?」
「柔道やっているほうが楽しいからいい」
「強情ねぇ」
「友人関係は私には必要ない。そんなことをしてる暇があったら……」
少々、うざったくなってきた。
私だって友達になったんだとかは言わないが、ここまで言い訳されると少し腹が立つ。私はベンチから立ち上がり、球磨川の胸倉をつかんだ。
球磨川はいきなりのことで反応できなかったのか、目を見開いたまま、私を見ている。
「ごちゃごちゃうっせえ。言い訳なんかしないで普通に嫌なら嫌だって帰れ。なにをそこまで何かと理由をつけて断ろうとすんの? うざい」
「……お前の友人は随分乱暴じゃないか」
「私は別に友人じゃねえよ。強制的に連れてこられただけだ。それに煽るって腹立つことするなぁ」
「…………」
「相手を煽るのはスポーツマンシップってやつですか? 大したもんだ。流石は天才柔道女子。スポーツマンシップにのっとったことをするなぁ」
「………!」
その瞬間、球磨川は私の手を振りほどき、そして、掴み返してきた。
「なんだと? これのどこがスポーツマンシップなんだ?」
「なに? 違うの? じゃなんで煽ったの? 煽ったんなら私に煽られることだっていいよね?」
「ふ、二人とも! やめなさい!」
「うっせえ!」
「あ、煽りすぎたな……。苦しい」
首が閉まる。息ができない。
「球磨川! パン子を離しなさい!」
「ちっ」
球磨川は舌打ちをして地面に私を下ろすのだった。
私は首元をさする。
「球磨川。その、ごめん。私の連れが……」
「気にするな。お前が悪いわけじゃない。それに、気が変わった」
球磨川は阿久津と肩を組む。
「お前と友達になってこいつを見返してやる」
「……なんでそうなるのっ!」
ネタが古いぞ。




