気に入らねえな
オルフェリート伯爵家でメイドロボットを直しているカイハ。
真剣な表情で直していた。
「くっそ、記憶媒体どころか思考媒体までやられてやがる……」
そう言っていたときだった。
執事の人が現れ、「ゴルフェル商会のかたがお見えになりました」といってきたのだった。伯爵は顔をしかめている。
「追い返せ」
「ですが自分は伯爵と話があると言っておられますが」
「なぜ見ず知らずの輩が話にあるんだ。どうせ勧誘かなんかだろう。追い返せ」
「はっ」
ゴルフェル商会は急に押しかけてくる。
もしかしてかかわりがあるのか? と一瞬疑ったけれども、顔を見て違うと思った。タダの勘なんだけれども、この人は悪い人ではないと思う。
襲われた件も多分騎士団に聞いて照らし合わせれば本当のことだとわかるしな。
「ゴルフェル商会が来るのはこれで何度目ですか?」
「三回目、だな。そのたびに追い返すのはとても面倒だよ」
「いつからくるように?」
「メイドロボットが壊れた後からだから……二週間前だな」
タイミングがいくらなんでもよすぎる。
これはもうほとんどクロに近いな。
「……まさか、ゴルフェル商会の輩が」
「気づきました?」
「あ、ああ。いくらなんでもタイミングがよすぎる。 メイドロボットが壊れた後から来るなんて…」
「ま、証拠はないし今はまだ言い逃れされますよ。証拠集めてつきつけてやりましょうや」
誰かを陥れ、自分がその地位に上り詰める。それ自体は悪いことじゃない。
ハングリーさは出世のためには必要なことだろうし、この社会を生きていくうえで必要なことだ。それ自体は問題はない。
が、やり方に問題がある。自分さえよければいい、なんてそんな考え方は……。
「気に入らねえなぁ……」
私がそうつぶやいた。
「まったくだぜ。こんなやり方は気に入らねえなぁゴルフェル商会よォ……」
「カイハも同意見?」
「ああ。せっかくのメイドロボットをここまで壊されて怒らねえ奴はいねえだろ。俺様は今最高にむしゃくしゃしてんだぜェ……!」
「じゃ、潰すか」
「おうよ」
気に入らないから潰す。
そういえばなんていうか、イキってる感じがして嫌なんだし、気に入らないからという理由であまり潰したくはない。それと、一筋縄でいくとは思えない。
「伯爵様。ぜひとも今回だけお話受けてみませんか?」
「わかった。おい、やっぱ呼び戻せ」
「は」
執事の人がずっと待機していた。
待っていたんだろう。たぶん、首を縦に振るのを待っていた。となると、あいつらと繋がってる可能性が高い。さっきの会話丸聞こえだったからやばいかな?
「さて、藪をつついて蛇が出るか大蛇が出るか」




