メイドロボットの修理
カイハはまだ行くところがあるらしい。
「今度はとある貴族の屋敷にいくぜー!」
ということだった。
オルフェリート伯爵家の屋敷の前にいる。すいませーんと門番さんにカイハが自分の名前を言って通してもらっていた。
私たちは中に案内される。
「カイハ様だ!」
「おうカイ、元気してるか?」
「もちろんです! カイハお姉さまが来るのを楽しみにしてました!」
好かれてるな……。
カイハは男の子を肩車して進んでいくのだった。
「よう伯爵様。整備に来たぜ」
「よく来てくれましたね。この子なのですが」
と、伯爵らしき人が出してきたのは無残な姿にされたメイドロボットだった。
腕がなく、機械部分がむき出しになっている。それをみてカイハも少し目を細めていた。気に入らないらしい。
「どうしてこうなったんだ」
「このメイドロボットはこの子を守ってくれたんです」
「守る?」
「ええ…」
「僕ね、この前すっごい怖い人に襲われたの! でも、ロボットさんが自分を犠牲にして助けてくれたんだ……」
「そっか。わかった。じゃ、俺様が完璧に直してやるよ」
カイハが工具を持ち、メイドロボットに手を付ける。
私は椅子に座った。
「その男の特徴とかわかります?」
「いや、僕はよくわからないんだ。報告では黒い服とは聞いていたけど顔を隠していたらしいから」
「強盗……か?」
「だけどメイドロボットをみると執拗にそちらに攻撃していた、と聞くね」
「メイドロボットが嫌なやつ、使う人も嫌悪するタイプとなると、そのロボットを商売する人が怪しいな」
機械自体が嫌いならば機械を壊せばいいだけなのだ。わざわざ人を狙う理由はない。
となると、人を襲ったのはカイハの同業者……もしくは扱っている商人の線が濃厚か……?
「貴族を襲ったとなると結構な問題になりませんか?」
「これでも伯爵家だから問題になりえるんだよね」
犯人は多分ゴルフェル商会だろうなとは思うけど。
「結構派手にぶっ壊れてやがるな……。一から作り直したほうがはえーってぐらいには壊れてるぜ」
「えー!? そんなー!? 直してください!」
「息子はそのメイドロボットが好きなようでね……。金はいくらでも払うから直してくれないかな」
「お得意様なわけだし別にいいけどよ……。記憶媒体をそのままってのは結構めんどくさいぜこれ……」
そこまで派手にぶっ壊されているんだな……。
「カイハ、何日で終わりそう?」
「あ? 三時間程度で終わらせてやらぁ。何日もかからねえよ」
「そう? 意外と早いんだ」
「メイドロボット自体作るのは俺様なら簡単だからな! そのまま一から作るのは多分二時間くらいで終わるぜ?」
二時間で終わるものが三時間かかるって結構めんどくさい壊され方してるんだな。
「だがこの壊されようはひでえ……。執拗にやられてるみてえだ。もしかしたら学習した機能がすべてなくなってしまっている可能性もある。それでもいいか?」
「え……」
「坊主には嫌な現実だろうが、こればかりは仕方ねえ。また一から教えることになるぜ?」
「そ、それでもいい! それでもいいから……直して……」
と、男の子が泣き始めたのだった。
それをみてカイハは男の子の頭をなでる。
「俺様から見てあんたらはいい貴族だよ。俺様のこんな乱暴な言葉遣いでも許容してくれるしな。ま、あんたらの愛情が本物か確かめただけだ。これでそれは嫌だって言ってたら直してなかったぜ」
「直してくれるの?」
「記憶もすべて元通りに復元してやらあ! この天才発明家、カイハ様に不可能はねえんだぜー!」
カイハは工具を手にし、一心不乱に直し始めたのだった。
それを見て、少し涙ぐむ伯爵様。子供に至ってはドキドキしながら見ている。
「犯人がいち早く捕まってほしいものです。また壊されでもしたら……僕は鬼になってしまうかもしれない」
「じゃ、犯人捜しは私がやりますよ」
カイハを勧誘したのは私だし、部下にまつわる事件なんだから私も精一杯協力しようじゃないか。
ま、あやしいのはゴルフェル商会だけれどね。




