天才は疎まれる
冒険者ギルドに訪れた瞬間、私は胸倉を掴まれていた。
「おいカイハさんよぉ……。何時までこの街に滞在してるつもりだ。早く消えろよ」
「消えろ……?」
「お前のせいで迷惑してんだよ死ねや」
と、謎の男が絡んできた。
カイハを疎んでいる男たち。カイハにもこんな敵がいたのか?
「女のくせに開発なんざしやがって……。目障りなんだよ」
そういうと、手にはナイフを持っていた。
私は、構わず掴んでいる手を振りほどき、ワグマの後ろに隠れる。やっべ、あのまま聞いていたら殺されていたところだ。
私が隠れていることで、ワグマが相手を見る。
「なにかしらうちの連れに」
「ああ?んだテメエ」
「人に口を聞く態度ではないわね。出直しなさい」
「ああ!?」
「兄貴、今回はいきましょうぜ……」
と、男は連れられて帰っていく。
「で、パンドラ。あんたとあいつなんかあったの?」
「いや、多分カイハのほうに因果があるんだと思う。たぶんあっちも発明家かなんかで自分より評価されているカイハに嫉妬……ってところじゃない? 元の体に戻ったら詳しく調べてみるけど」
「もう動くのね。まだ魔王軍に被害があるってわけじゃないのに」
「まだじゃないんだよ。まだじゃダメなんだよ。こういう不安の芽は早めに摘み取るんだよ。何か起きてからじゃ、遅いからね」
災害然り、しっかりと事前対策は必要なのだ。
それから三日後、元の体に戻れた。
「久しぶりの俺様の体だぜー!」
「カイハ、そういやどこかから恨みかってたりする?」
「なんでだ? こんなパーフェクトな俺様が敵を作ってるわけ……。いや、他の同業者からは疎まれていたな。というか、ゴルフェル商会からはあまりいい印象を抱かれてねえ気がするな」
「へぇ」
「なんかあったのか?」
「実はそこの商会に殺されそうになった」
「はっはー! やっぱり仕掛けてくるつもりだったんだな! 魔王軍について正解だったぜ!」
知ってたんだな。
うすうす怪しいとは気づいていたんだろう。だけどたぶん彼女自身のプライドがなにもなくて逃げるのは許さなかったんじゃないだろうか。
「天才は憎まれるからな! 過ぎた才能ってのも疎まれるからな! 天才発明家の宿命よ!」
「それもそうか」
「ま、奴らも今の私の本拠地がここであることはしらねーだろうし引きこもっていたら安全だろうよ。それに、この部屋にはあんたと魔王様、ビャクロ様ぐらいしか一人で入れねーように防衛システムつけてるからな」
「何それ初耳」
「信用ならねー奴を一人で入れるわけねーだろ? 最高幹部どもは仕方ねーから入れてやった! あと魔王様もな!」
つまりこの部屋に一人で入れるのは私とワグマ、ビャクロだけね……。まあ、いい判断だとは思うさ。
「他の奴らが入るにはそいつらと一緒じゃなきゃいけねえんだぜ? どうだこの防犯システム! あまりにも頭が固すぎて融通が利かねえから商品化は無理だったんだがよ、私個人で使うなら最高だぜー!」
「た、楽しそうだな……」
こいつ意外と楽しんでるな。




