君の発明は世界を変えられる
カイハと一緒に王城を出る。
「じゃ、俺様はまた開発に戻るからな! あばよ!」
「ああ、ちょっと待って」
私はカイハの手を取って引き留める。
「カイハ。魔王軍に興味はない?」
「魔王軍だァ?」
そういうと、私をなめ回すかのように見てくるのだった。
「あんた魔王軍か……。しかも、最高幹部と来やがった」
「そう、パンドラね。で、どう? 入ってみない?」
私は、手を差し伸べる。
「君の発明は、世界を変えられる。魔王の元で変えてみせようよ」
私がそう囁くと、カイハは感化されたような目を私に向けてきた。
「私自身、君が開発したものはすごいと思ってるよ。さっき聞いたメイドロボット。優秀な発明だ」
「わ、わかる、のか?」
「もちろんさ。君は天才だ。私と同じでね」
「……周りのバカ共は私の発明をわかろうとしなかった。所詮は凡人どもだと思っていた。が、あんたは違うんだな」
「天才と凡人は違うんだよ。だからわからなくても無理はない。天才的な君の発明でバカ騒ぎ……じゃない、私の兵器を開発してほしいんだ」
私がそういうと、兵器?とオウム返しで聞いてくる。
念願だった、本格的な兵器。日本では拳銃と呼ばれる代物を作らせる。できるだけ水は使いたくないからね。切り札みたいなものだし。切り札を先に見せるわけにもいかないしね。
「戦争でもするのか?」
「自衛のためだよ。ま、簡単に人を殺せるような代物を作らせるから……私以外には作らないようにね」
「……待て、俺様が入るってわかったような口ぶりじゃねえか」
「入るんでしょ?」
「……まぁ入るけどよ」
「よろしくね」
「……おう」
魔王軍に新たな仲間追加。開発部門。
カイハを連れて帰ると、ワグマが私の肩を掴んだ。
「誰あの子」
「仲間にしてきた」
「いや、なんか中世には似合わないような機械がたくさんあるんだけど……」
「それは私も思ってる」
出会ったときから思っていたが異質だ。
こいつが作る機械は、私たちが住む現実より進化している。だからこそ異質なのだ。この発明女子にはそういった謎が残ってはいるが、使えるものは使っておこう。あとで詳しく調べるさ。
「で、スカウトした心理は?」
「単に面白そうだから」
「……はぁ」
「こいつに機械をいじくらせるための部屋を用意してやってよ。なるべく広いほうがいいんじゃないかな」
「わかったわ……」
その瞬間、誰かがカイハに切りかかっていた。
カイハは咄嗟にしょっている機械リュックの赤いボタンを押すと、無数の手が相手を掴む。そして、手が相手を持ち上げていた。
「はーっはっは! 俺様には無数の手があるんだぜ! これで自衛もできるんだ!」
「無数の手……」
「ま、手が足りないってときあるだろ? こいつは俺様の脳波で動いてるから俺様が自由に動かせるんだ」
「なるほど、いきなり切りかかって失礼」
「わかればいいんだぜ! ま、多分戦争となっても俺様は部屋に引きこもってるだろうけどな! 発明しか興味ねーからよー。でもまぁ、裏切ることはないぜ。あのパンドラは私と同じ天才とみた。すぐに嘘もバレるだろうさ」
「……意外と賢いのねあいつ」
「バカっぽい見た目してるのにな」
「それはいわない」
というかビャクロ。それお前が言えない。




