王の処刑、歓喜に包まれむせび泣く
三人称視点です
女帝は処刑台の上に立っていた。
民衆は処刑台を見上げる。
「今から行うのは女帝の処刑である! 今から魔王軍がこの帝都を支配する!」
「聞けばこの帝、邪知暴虐というではないか。毎晩男とやっているという噂を聞くし、税金だってバカにならない額ばかりだっただろう?」
「ま、私たちが手を下さなくても誰かが先頭にたってクーデター起きてたかもしれないわね」
魔王軍の三人が大きな声で語りつける。
民衆は大きく戸惑っていた。たしかに、税金は高くなる一方であった。国のために使われてないわなんだで不満が大きく募っていた。いずれ崩壊を迎えていた国の女帝が処刑される。魔王軍が支配する。魔王軍に一抹の不安を抱えていた。
「ま、悪いようには私たちしないから」
「なるようになるって。じゃ、女帝から最後のメッセージを聞きましょう。最後の一声は果たして憤怒か縋ってくるか。どう転んでも死ぬことは変わりないしね」
「…私がやるのよね。やりたくないわぁ。ビャクロ代わってよ」
「ダメだ。こういうのは一番上がやるものだ」
「いや、魔王様の命令よ」
「お、じゃどっちが処刑するか戦うか今ここで」
「面白いわね……」
と、魔王とビャクロが取っ組み合いを始めたのだった。
民はそれを不安に見つつ、他愛もないやり取りをしていた魔王軍に対する不安は少し和らいでいく。
「うらああああ!」
「へ?」
魔王とビャクロの流れ弾に当たり、パンドラが空中に放り出される。ただ浮いているので落ちることはなかった。
「二人ともそこまで。やりたくないなら私がやるよ」
パンドラが処刑用の剣を握る。
そして、女帝の轡を外すと、女帝は、大きく息を吸い込んだ。
「魔王! あんたらは絶対許さないわ! 私の帝国をこうもっ……! あんたらも見てないで助けなさいよ! あんたの国のトップがこうもやられてんのよ! 少しは国の為に貢献したらどうなの!」
その言葉で、民衆は怒ったのだった。
国のため。何度そういう文句を突きつけられてきたのか。国のためといいながらも国は自分たちの為にやってくれたことはあるだろうか。
怒りが民衆に湧きおこる。
「いいぞ! そいつを処刑しろ魔王軍!」
「やっちまえ!」
そういった声がちらほらと聞こえてくるようになっていた。
「どうやら、民衆はあんたの処刑がお望みのようだね」
パンドラが大剣を上につきあげる。
「一緒に地獄へ落ちようぜ……? 先行って待っていてくれよ」
パンドラが剣を振り下ろす。
女帝の首が切れ、地面に落ちたのだった。血を噴き出し、動かなくなる女帝の体。民衆は歓喜に舞い上がる。あの女帝の支配から逃れられるのだと安堵した。
「貴族も貴族よねぇ。みんな保身に回ってる。やっぱりろくでもないわね」
「ま、我が身大切さはわからなくもないけどね」
王の処刑は、やっと終わった。
戦争も、やっと終結したのだ。いつ魔王軍の元に駆り出されるか不安だった一般兵は剣を捨て、妻を抱きしめる。死ななくていい、死にいかなくていい。そんな安心感が彼らを包み込んだのだった。
これで戦争へんは終わりかな。
数話、パン子暗躍編をかいて次の章にいきます。




