鬼神の烈火、それは我が愉悦なり ②
気が付くと、大量の屍が積み上げられていた。
「……えっ、なにこれ!? 私がやったの!?」
「自覚ないのか?」
「それはそれでおかしいだろ……」
ビャクロとパンドラが苦笑いを浮かべていた。
「わ、私楽しむとその、前が見えなくなるのよ」
「知ってる。けど、こうまで戦闘能力が上がるとは……。もはや野生児の感じだったぞ」
ビャクロが笑った。
野生児はあんたでしょうがとツッコミたかったが、この惨状を私がやった、とならばつっこめないというのが本心だ。
「私たちみんな何らかの感情で戦闘能力がアップするとかやべえよ……。いや、ほんとマジで」
「……そうなの?」
「気づいてないの? 私は怒ったら結構強くなるよ」
「私は悲しい時だな。滅多にならないが悲しいときは何かに打ち込むことにしてるんだ」
「え、ええ!?」
そうなの!?
たしかに二人が怒ってるところとか、泣いてるところをあまり見たことがないからわかんないのは当たり前だけど……そうなの?
私は頭を抱えていると、目の前に翼を生やした吸血鬼が降りてきた。
「おうやっておったか魔王様よ。帝都制圧完了したぞ」
「ナイスパライゾ。守り滅茶苦茶薄かったでしょ」
「実力者が大していなかったのが不思議であったが……ここに駆り出されておったのか。なぜパンドラは今日が戦争起きるのだとわかったのだ?」
「……神だから」
おい、そりゃないでしょパンドラさんよ。
「ま、この戦争を起こさせたのがこいつよ。まったく、私も騙されたのよ」
「……ふむ。そういえばエディットの件はどうなったのだ? 裏切ったと聞いておったが」
「あれもこいつの嘘よ。現に戦ってたでしょ多分」
「そういえばそうだな」
私はパンドラのほうを見ると、いやぁと照れている。照れるところじゃないわよ。
「ま、というわけで今は女帝は拘束している。処刑は衆人環視の前でやったほうがいいだろう?」
「そうね。でも私たちが今から行くのかしら」
「それしかないだろう。少なくとも、魔王様、ビャクロ、パンドラは必要だ。魔王とその最高幹部二人はいたほうがいいだろう」
「最高幹部って扱いなの私」
ま、魔王軍が乗っ取った、ならば魔王の声明があったほうがいいだろうからね。
私はやれやれと思いながら、レブルのほうを向いた。
「あとは騎士団長のみよ。やれるわね、レブル」
「誠心誠意頑張ります!」
「そう。いい返事ね」
私は一緒に来ていたフォレトスの背にまたがり、エヴァン帝国の帝都へと急いで向かうのだった。他の貴族も応戦してきそうなものだったがよくもまぁこういう風に帝都を支配下に置けるもんだ。パンドラの手腕にはホント呆れるぐらいすごいわね。
「ま、支配下においてもいずれ謀反はされるわよねぇ」
「仕方ないだろう。だが別に欲しいわけじゃないだろうから見捨ててもいいと思うがな」
「新たなリーダーが生まれるだけだしね」
皇帝のいない帝国というものは寂しいものだ。




