誰が為に嘘をつく? ①
謎の組織、エルピスの目的が分かり、数日が経過する。
「魔王様! パンドラ様が敵の組織に囚われたようで!」
「はあ!?」
と、そういうニュースが耳に入った。
たしかに危険だった。もしかしたらこういうこともあるとは思っていのだけれど、パンドラなら大丈夫だと思っていた。
「完全に油断してたわねあいつ……!」
滅多に気を抜かないパンドラだけれども、たまに力が抜けたように気を抜くことがある。
そりゃいつでも神経を張り巡らせていたなら疲れるのは当たり前だし、仕方ないとは思う。けどタイミングがちょっと悪すぎるんじゃない?
魔王城に返ってきてからにしなさいよ! なんで囚われの姫になってるのよ!
「で、パンドラ様を返してほしいならば明日クロッケル平原で待っていろ、そこで決着をつけてやるというメッセージが届いております」
「意外と行動早いわね。どうもなんか展開が早いような気がしてならないわ」
まるで誰かの手のひらの上で踊っているような感じがする。
私たちも、エルピスも手のひらの上で転がされているような。そんな感じがするのだ。たぶん気のせいだとは思うけど。
「ま、いくわよ」
だけれども翌日、事件が起きた。
エルピスとの戦いというのに、味方軍がそれほどいなかった。いや、森の賢者が全員いなくなり、レブルとマリアベルぐらいしかこちらの軍勢に残ってはいない。
「これはいったいどういうことよ!?」
「知らん。だが、森の賢者は全員グルだとみてもいいかもしれないな」
「……本当に自信なくなるわ。こうも多人数に裏切られるなんて」
「元気出せよ」
指定された平原で待ちながらそういう会話をしていると、目の前にローブをかぶった四人組が現れた。
そして、いきなり私の首めがけてナイフを突き刺そうとしてくるが、レブルがそれをはじく。
「ちぃ!」
「あなたたちがエルピスですね! 魔王様は私が守ります!」
「ナンバーツー。お前があの女を相手しろ。魔王は俺がやる」
と、どこかで聞いたことがあるような声をした男が私と対峙する。
ビャクロももう一人のローブをかぶった輩と対峙していた。レブルは心配はない、が、こいつは結構手練れだとみた。勝てるかしら……。
私は大剣を取り出した。
「私の首、そうやすやすとは取らせないわよ!」
「ほう? そういえるのも今のうちだ」
男は、足払いをしてきたのだった。
そして、私の上に乗っかり、そのままナイフをつき下ろそうとしてきたのでそれを手で受け止める。真剣白刃取りキッツいわよ! ぶっつけでよくできたわね! 褒めてやりたいわ!
あーびびったー。死ぬかと思ったわよ。
「考え直さないかしら。私の仲間になれば許してあげるわよ」
「俺の目的は魔王になることだけだ」
「そう」
私はナイフを奪い、その場に投げ捨てる。
男は私の上から降り、私と距離をとった。
「ちっ。得物を失ったか。分が悪いな」
「逃がさないわよ」
私は男にとびかかる。
その瞬間、私の周りには水の檻ができていた。それに閉じ込められる。この能力は……!
「わ、わかったわ。あなたの正体が!」
私は、息を吸う。
「パンドラ! あなたがエルピスのリーダーなのね!?」




