月明かりに照らされて
この話とは全く関係ないのですが、帝国軍との戦いはすぐに終わらせる予定です。
眠れない。
有栖川さんの家の一室を借りているけれど、眠れない。現在の時刻は二時半であり、組の人も有栖川さんも寝ている時間だった。
私は一人布団から起き上がり、部屋から出る。
「今日満月か。綺麗だな」
私は、一人門を開けて外を散歩することにした。
月明かりで照らされた街の道。夜中二時だというのに多少走る車。なんていうか、夜は結構神秘的だと思う。
そして、公園。私はベンチに座った。
「……あれ? パン子さん」
「その声は武宮君?」
私の隣には武宮君がなぜか座っていたのだった。
「奇遇だね。どうしたの」
「眠れなくて散歩。武宮君は?」
「俺も同じ理由。たまに眠れなくなるんだ」
と、武宮君は少し笑っていた。
「……今日は綺麗な満月だな」
「そうだね」
月明かりが武宮君と私を照らす。
静まり返っている夜の公園。不気味ではあるがどこか気持ちにグッとくる。
「……パン子」
「なに?」
「その、月が綺麗だな」
「……告白?」
「ち、違う。感想を述べたまでで」
「そう。でもまぁ、月が綺麗なんてべたな告白するわけないか」
月が綺麗だという告白は聞き飽きた。
たしかに、魅力的ではあるが、使いすぎたらベタになる。有名になってきた弊害だな。もうちょいかっこいい告白はないものか。
そう考えていると、武宮君は少し顔を赤くしている。
「告白されて嫌じゃなかったのか」
「ん? まあ、武宮君には悪い感情抱いてないし」
「そ、そうか。よかった」
むしろ武宮君は私を気遣ってくれているのがわかる。
純粋な善意だろう。二重人格になったら多分もう片方は悪くなる。ジキルとハイドかな? だがしかし、悪意もたくらみもない純粋な善意っていうのは楽だ。
「私は個人的な感情としては武宮君は嫌いじゃない。むしろ少し好意を抱いていると思うよ。でも、武宮君はどうだろうね」
「俺は……」
「ま、人の気持ちなんてわからないしわかろうともしないけどさ私はね」
私は結局のところ自分至上主義だ。
自分さえよければいいっていうエゴの塊だ。人の気持ちなんて本当はどうでもいいのだ。悪事も、善意もすべて私のためだけにする。
武宮君とは真反対かもしれないな。
「私たち、結構相性いいかもね。反対だからこそ」
「………そ、そう?」
「って、これじゃ告白みたいだな。今言った言葉忘れてね?」
私はベンチから立ち上がる。
そろそろいい眠気が来た。多分もう寝れる。眠い時って結構頭働かないんです。朝弱いんです。眠かったら一日中ボーっとするぐらいには眠さに弱いのだ。だからたまに何言ってるかわかんないときある。
「眠いから帰るよ。って、あ、やべ」
眠さが一気に襲い掛かってきたのか、足元がふらついた。
そして、地面が間近に迫る。思わず目をつむるが、衝撃は来なかった。見てみると、武宮君が受け止めている。かっこいいことすんじゃねえか。
「すごい眠そうだね。帰れる? 俺の家でいいんなら休んでいきなよ」
「そうさせてもらう。ちょっとやばいかも」
眠さが一気に襲い掛かってくるのがヤヴァイ兵長。
ラブコメ書きたくなっちゃうからこれで妥協しました。




