ピザを食べに行こう ②
ピザが来るまでの間、私はエヴァン帝国についての書物を読んでいた。
皇帝エヴァン。その先祖はかつてこの大陸を統一しようとした覇者である。かつてはオールランド王国の一介の領主であったリチャード・エヴァン公爵が謀反を起こし、オールランド王国の領土の半分を自分の所有地とし、まだ強欲であった彼はニホンへも出兵する。だがしかし、エヴァン兵は勇者であった二ホンの王族に返り討ちにあい、泣く泣く侵攻はやめにした。
「ろくでもなさそうな国なのは事実だなぁ」
つまり今回の侵攻はこういうことだろうな。
エヴァン帝国は魔王を討ち取ることにより、オールランド王国とニホンの憂いを消したと喧伝したいのだ。魔王を討ち取ったという功績もあれば、他二国との友好も深まる……なんてことを考えている。
頭は悪くはない。そういったことをするというのは私でもやる。それに、この二国で批難を受けても、他大陸にアピールすればいいのだ。他の大陸は魔王を好んではいないらしいからな。魔王を討ち取った国として有名になりたいのだ。
「思惑が分かったとしても素直に負けてあげるわけにはいかねーな」
「待たせたヨ! マルゲリータ!」
「お、うまそー」
マルゲリータが二枚運ばれてきた。
私はピザカッターを持ち、綺麗に八等分する。そして、一切れを手に持ち、チーズを伸ばす。うおお、伸びる! 美味そう!
これは美味しそうだねえ。よだれが……。
「いただきまーす」
口に運ぶ。
チーズがあふれ出す。トマトソースの酸味とバジルの風味、チーズの濃厚さが合わさってる。すごい一体感だ。美味い。
ピザなんて宅配ぐらいだもんなー。今のご時世めっちゃ便利。
「生地もちもちしてて美味しいですね。これなら無限に食えそうです」
「おいしい!」
「イケる。これがタダとは申し訳ない。少しでも金払うべきだろうか……」
これはお礼なんだし食べればいいよ。
私は零れ落ちたチーズを手ですくい、口に運ぶ。本場の料理ってすごいよね。たまにワグマが連れてってくれるけどそれ楽しみにしてるもん。
まあ、ワグマはこういった庶民のレストランじゃなくてマジモンの高級レストランのほうが多いけどな。味覚はお嬢様なので庶民の味付けは濃すぎるらしい。おいおい、そんなこといってたら宇宙飛行士になれないぞ。宇宙食味濃いんだぞ。いや、宇宙飛行士になりたいか知らんけど。
「私もピザに挑戦してみるか? ピザ回しは難しいけど独学で……。うん、やってみよう。何事も挑戦だよな」
時は戻って現実。
私は生地を手でくるくると回転させていた。
「うわ意外と余裕じゃん」
人差し指でくるくる~とピザ生地を伸ばす。
これは大道芸だ。空中に放り投げ、今度は左手で受け止める。そしてくるくる回す。そして十分に回したら、具材をのっける。まずは特製トマトソースを塗り、その上にアスパラ、ピーマンなどの野菜を乗っける。そして、チーズをふりかけいざ石窯に。
「すごいですパン子さん!」
「すげえ。見事な手際だ……」
「……ピザこんなうまそうなのか。宅配しか食ったことねえよ俺」
数分後、石窯からピザを取り出す。
「完成」
「お、俺一番だ!」
「てめ! しょっぱなは俺が食うんだよ!」
ふふ、結構な自信作です。
めちゃくちゃ好評でした。
後半食べに行くっていうよりか作ってる




