閑話 パンドラについて
パンドラがログインしておらず、私はログインする。
昨日の誕生会では酔っていたとはいえパン子にひどいことをした。そう後悔していると、誰かが私の部屋に入ってきた。
あの信号機トリオだった。
「魔王様。ちょっとお尋ねしたいことが……」
「なに?」
こいつらはNPCではあるが、如何せん私への忠誠心が高い。
裏切らない心配はあるけれど……。そのせいでパンドラに当たりが強かった。
「パンドラ様のことについてです」
「ああ、パンドラね」
「パンドラ様は一体何者なんですか? アレは一体何なんですか?」
「……私にそれを聞く前に」
私は青い髪のライザックを睨む。
「アレ、呼ばわりはやめないかしら。いくらあなたでも腹が立つわ」
「す、すいません。暴言でした」
「よろしい。それに、聞きたいんでしょ? なら座りなさい」
私はお茶を用意する。
「魔王様のお茶美味しくて好きなんだぜ俺!」
「子供は無邪気でいいですねぇ。どこかの誰かさんと違って」
「誰のこと言ってるんだイルマ?」
「さあ、誰でしょう」
ライザックとイルマがすこし睨みあっていた。
やれやれ……。
「言っておくけど、パンドラは私と一緒に魔王軍を始めた人よ。ビャクロとパンドラ、私で魔王軍を結成したのよ」
「そ、そんな時期から一緒に?」
「ええ。今までいなかったのは別の大陸にいってたのよ。決してぽっと出というわけじゃないわ」
私がそういうと二人は納得したのかなるほどなんていって頷いている。
「それにあなたたちのほうがパンドラにとってはぽっと出の奴だからねぇ。パンドラはあんたらのことを駒としか思ってないわよ。死んでも多分どうでもいいと思われてる。ライザックは出会いが出会いだし」
「うぐっ……」
「あの子が死んで哀しむのは自分でスカウトした人だけじゃないかしら。あの子の信頼を得るのは難しいのよ」
私だって最初は信頼されなかった。
小学生の頃、善意で話しかけても冷たい目をされた。私にだって冷たい目を向けるような人だった。今でこそ信頼を勝ち得てはいるが、パンドラの信頼を失えば二度と回復はしないと思ってもいいぐらいにはあの子人を信用しない。
「パンドラは危険よ。あの頭の良さは私ですら怖いわ。でも、いなかったら今の魔王軍はないわよ。裏で暗躍するあの子がいるからこそ、私たちは堂々と魔王軍を続けられる。そう考えるとパンドラの功績はでかいものよ」
「……そうなんですか。そういうものですか」
「ええ。そしてライザック」
私はライザックの肩にナイフを投げる。
「あなた、前にパンドラを殺そうと攻撃を仕掛けたそうじゃない。よくもまぁ私の友人にそんなことをしたわね。あなたが死で償うべきじゃないかしら」
「も、申し訳ございません!」
「まぁ、パンドラが許した以上、私が殺すわけにはいかないわね。私は友人が一番大切だから。二度とあんな真似するんじゃないわよ」
思い出しただけで少し腹が立つ。
すると、誰かが扉を開けて入ってきた。
「ワグマ、助けろ!」
「パンドラが勉強しろと迫ってくるんだ! 助けてくれ!」
「……私もしたほうがいいと思うわよ」
「ワグマ、お前もか!」
まったく。ビャクロは永遠の勉強嫌いね。私から誘っておいてなんだけど少しは勉強しなさい。




