混沌とした誕生会 ①
10月14日。
私は白露の家に招待された。何を隠そう、今日は白露の誕生日である。16歳となった白露は嬉しそうにしていた。
くっ……私だけまだ15歳だぜ!
「娘の誕生日を祝ってくれてありがとう、叔父さんは元気にしているかい?」
「この前過労でぶっ倒れて、今度月乃の会社に就職したと思ったら今度は家がおじゃんですよ。なんでこうも私って犯罪に巻き込まれるんですか?」
「君の人生なかなかハードすぎやしないか」
私もそう思う。
白露の父さんは苦笑いを浮かべた。前にも説明したと思うけど白露の父さんは警察官の偉い人であり、私の父、母を騙した詐欺師を逮捕した人でもある。
見た目は本当に中年のおっさんで名刑事って感じの風貌だ。
「だが、君は強くなった。あの時とは見違えるほど。でも、おじさんは心配だよ。君みたいな子が地雷を踏みぬかれた場合、簡単に人をも殺しかねないからね。復讐は考えていたりするか?」
「復讐なんて馬鹿馬鹿しい。そんなんしませんよ」
詐欺師は今でもムカつくし、タガが外れるかもしれない。詐欺被害のことを聞くと無性に腹が立つのは本当だし、多分言う通り人を殺すことだって戸惑わない。
この国は同族殺しが一番の重罪だから。情状酌量なんて一切ない。
「ならいいのだが……。おじさんは君がなにかしたら逮捕しなくてはならない。もちろん私の娘もそうだ。阿久津家のお嬢さんだってそう。おじさんだって小さい犯罪は見逃したりすることもある。が、だからといって羽目を外すなよ」
「父さん。固い話はやめろ。今日は私の誕生会だぞ」
「そ、そうだな。浮かれた気分に水を差してごめんな」
白露は誠に不満そうだった。
意外と白露のお父さん過保護だからなぁ。白露から嫌いって言われた瞬間滅茶苦茶泣きそうだ。
「じゃ、気を取り直して乾杯!」
「乾杯」
「なんで月乃が音頭とるんだよ……」
私は手にしたカルピスを……、なんか味が変だな。
「ってこれカルピスサワーじゃねえか!?」
「いっけね! おじさん間違えた! おい、月乃ちゃん! 白露! 飲む……ってもう遅え!」
何してんだ警察官!? 未成年飲酒をさせちゃってるじゃねえか!
私と、白露と月乃はもう缶の中身が大幅ない。カルピスだって思って一気に飲んじゃったもの。おじさんなにしてるんですか?
「な、なんかふわふわするわぁ……。なによこれぇ……」
「ひっく」
「二人酔ってるし!?」
「うちの女房のサワーだこれ! 本物はこれだ」
と、今度はおじさんは本当のカルピスを出してきた。
おいおい。缶とペットボトル普通間違えるかね?
「ひっく……パン子ぉ! 投げさせろぉ!」
「パン子っ……ぐすっ」
私は追いかけまわされていた。
白露が酔って私に柔道技をかけようとしている。私は必死に逃げていた。
「はじめてお酒飲んでこう走ると私も酔いが回るってぇ……! 二人酒弱え! ウイスキーボンボンとか絶対食べさせちゃダメなタイプだ!」
「……こ、このことは内密にな」
「内密にするから娘どうにかしろ! もう無理! ただでさえ体力ないんだから!」
おじさんは私を庇うように前に出た。
だがしかし、一本で背負い投げされた。
「おじさーん!?」
「す、すまねえ。酒が入ったらこいつ暴走するようだ。妻と同じで」
「ふっざけんなあああああああああ! 責任とれやアアアア! 何度も投げられろおおおおお!」
私は、思いっきり手首を掴まれる。
そして、一気に背負い投げされたのだった。思い切り背中を打ち、もがき苦しむ。
「いっでぇ……! 水! 早く私たちに水を!」
「……パン子ぉ。白露ぉ。ひぐっ」
「ってなんで月乃は脱いでんだぁああああ!?」
月乃は下着姿の状態になっていた。
下着姿で泣いている。私は懐からスマホを取り出しカメラをとった。
「盗撮魔ぁ! 成敗っ!」
「いでででで! ギブギブ! これ柔道技じゃなくてプロレス技! 四の字固め!」
いろいろとカオスと化していた。
パン子さんお酒には強いです。未成年だから自主的には飲まないんですがたぶん鬼殺しも平然と飲めるタイプ。




