信号機トリオ ②
赤髪の男の子はエクスというらしい。
とても才能がある少年だった。私はエクスと一緒に場内を歩いていると黄色い髪の男性が前から歩いてくる。にっこりと笑っているのがちょっと気色悪い。
でも、そんな強くはない。
「こんにちは。初めまして。私は魔王軍の参謀として雇われましたイルマと申します。お見知りおきを」
「参謀、ねぇ。実力はあるかい?」
「戦略ならば多少は……」
ふぅん。
私がいない穴埋めだと思うけど正直私が考えればいいんだよな。そう思いながらも話を聞くことにした。
「私も戦略には自信があるんだよ。チェスでもやらない?」
「いいでしょう。私は強いんです」
私は、盤上の駒を手に持ち、盤においた。
「チェックメイト」
「なっ……」
私は駒を手に取り不敵に笑う。
こういう勝負では負けなしなのだ。私から挑んだ勝負とはいえ負けることはほとんどない。勝てるとなめ腐ってハンデを与えてくれたのが運の尽きだな。
「強いですね。正直僕より強い人がいるなんて思いませんでしたよ」
「井の中の蛙ってやつだ。それに、私こういうのは得意だから」
未だにこういう勝負は負け知らず。
ゲームは運などに左右されたりすることもあるが、基本は戦略なのだ。相手をどう動かせるかを計算して、相手がどう動くかを見極めて。最適最善の一手を差す。
「チャンスを与えてあげたのにそれを利用しなかったのは残念だね。深読みしすぎもよくないよ」
「そうですね。たしかに何度もチャンスはありましたが裏があると踏んでしまってチャンスを無駄にしました」
深読みしすぎる傾向があると思ったが実際にそうだった。
深読みしすぎもよくない。そのせいで罠にかかったりすることもある。きちんと状況判断するべきなのだ。盤上をよく観察し、相手の駒の位置を把握し、どう動かせるかを計算する。戦争と同じなのだ。
「パンドラ様すげー! あのイルマに勝てるなんて! 俺ですらオセロも勝ったことないのに!」
「ははは、こういう盤上などでの戦略勝負が唯一のとりえだったんですが」
「私勝たないほうがよかった?」
「いえ。初めて負けを知りました。いい経験になりました」
「そう」
そう話していると、扉が開かれる。
「こんなところにいやがった! パンドラ!」
「おお、青い髪の青年。どうした?」
「あの曲がり角にいたビャクロ様はお前だな! ビャクロ様に聞いたぞ!」
「あはは。騙される方が悪いんだよ。その様子だと私のスキルについても聞いたね?」
「もちろんさ! あんたのスキルは危険だ! ここで俺が殺してやる!」
「殺してやるとかまた物騒なことを。……でも、剣を抜いたからには」
私は水の刃をぶん投げて、相手の肩に当てる。
青い髪の青年の肩に突き刺さった。
「自分が死ぬ覚悟もあるんだろう? こう見えても私は血の気多くてね」
私は水の刀を作り、振り下ろす。青い髪の男は振り下ろされる刀をじっくりと見ていた。そして、私は青年の前に来た瞬間に水を弾けさせる。
弾けた水は拡散し、青年に降りかかった。髪から水滴が垂れる。
「なんてね。殺しはしないけどさ」
私はずいっと顔を近づける。
「私を敵に回さないほうがいいよ。私はワグマの味方だから。君たちをここで殺しても別に私の心は痛まないから」
「は、はい……」
「素直でよろしい。さてと、じゃ、結構遊んだことだし書庫にこもろうかな」
私は「バイバイ」といってその場を後にし、ログアウトしたのだった。




