信号機トリオ ①
私は魔王城を探索していた。
後ろでは見張られながら。青い髪の男が私の後ろをついてきている。どうやらあの男には私は怪しい人に認定されてしまったらしい。
聖騎士みたいな鎧を着ていて怪しい動きでもしようもんなら斬られそうだ。
「ねえ、いつまでついてくるの?」
「怪しい動きをしたらすぐにしょっぴくためだ」
「はぁ」
怪しい人ではないけどね。
こうもついてこられるとうざったいものがある。ストーカーだったらわざとつけさせて有栖川さんの家に入って組員に「ストーカーに襲われていて! あそこにいるんです!」といえば言ってくれるだろうし現実ではまだ楽なんだけど……。
「紹介されたでしょ。私は魔王軍だって」
「された。が、どうもお前は怪しいのだ。魔王様をちらちら見ているということは自分が就きたいってそう思ってるんじゃないか?」
「とんだ迷推理披露してるところ悪いけど私は王にふさわしくないからね。私が王ならあんたら全員解雇する勢いだから」
そもそも雇わない。
自分でスカウトしたやつぐらいしか魔王軍には入れさせない。それが一番ベストな選択なのだ。信頼できる奴を近くに置いておくのがいい。
すぐに裏切るような奴は使い捨てで充分なのだ。
「じゃあなぜチラチラ見ている? どう見ても怪しいだろうが」
「それはワグマがきれいだなーって」
「嘘を言うな!」
「なに? 君は人のいうことすべてが嘘に聞こえるの? それとも、嘘がわかるの?」
「そうではない。だが嘘だろう!」
「嘘じゃないよ。否定するってことはワグマ綺麗じゃないんだね」
「そ、そういうことをいってるのではない!」
私がそういうと手をぶんぶんと振りながら否定する。
私はけらけら笑い、曲がり角を曲がる。そして、ビャクロに変身した。
「あれ、ビャクロ様。ここに水色の髪をしたあのパンドラってやつ通りませんでしたか?」
「通ったな。あっちいったぞ」
「ありがとうございます」
と、男は走って向かっていった。私は模倣を解いて中庭へと向かうのだった。
中庭には木刀を打つ音が聞こえる。
木の人形に向かって木刀を必死に降る赤髪の少年がいた。
「なにしてるの?」
「あ、パンドラ様! 訓練だよ! 将来は魔王様に仕える騎士になるんだ!」
「小さいのに偉いねえ」
「へっへー。これでも俺才能あるんだぞ。ビャクロ様の訓練についていけてるし!」
「それはまじで才能あるな……」
あのビャクロの訓練は本当にきつい。
ビャクロ自身自分にも厳しい人なので結構な課題を出す。なのでついていけなくても仕方ないし、ついていけるならその子は才能があるのだ。いや、これ割とマジで。
「パンドラ様もつええのか?」
「さあ、どうだろ」
「ビャクロ様が言うには実力的にはそんなだけどでも、敵に回すと恐ろしいとか」
「あはは。そうかもね」
なんてことを子供に吹き込んでるんですか?
私はいたいけな少女って言ってくださいよ。可憐な少女って。
「まあ、私だって強いよ。そうだなぁ、ワグマと……魔王様と並ぶくらいって思っておけばいいさ」
私の実力は私ですらよくわからないのだ。




