魔王の城へ、いざ帰還!
起こすなよと言っていたローキッスを無理やり起こし、ローキッスは不満そうに椅子に座っている。
私は公爵と紅茶を飲んでいた。
「実は魔王様にお願いしていく日を今日にしてもらったんだ。準備はいいかい?」
「突然ですね。今日知らされるって」
「実は今日転移していいかいと書いた手紙の返信が今日届いたんだ。道中でクラーケンに襲われたらしくて」
「転移魔法使わないんですね」
「使えないよ。魔力が相当必要だからね」
なるほど。
本来は数日前に届くはずの手紙が今日届いて今日行くことになったのはそういう理由か。まあいいでしょう。
「ユウナ、ウルフ。私がもともといた大陸に戻るよ。覚悟はいい?」
「もちろんです。ついていくといったんですからね」
「俺は奴隷だ。つべこべ言う権利もねえだろうよ」
二人は同意していた。
「そういうのいいからさっさとしてや……」
「戻れるんですね!」
「長かったです……。やっと我が母なる大地に……」
もともとあっちの大陸にいた私たちは喜びを隠せていなかった。
公爵様の隣には魔導士の人が立っている。ものすごく真面目そうな顔をしていて、先ほどちょっと手帳を拝見させていただいたのだが、予定がびっしりとマナーなどのこともびっしりと。真面目な人だというのはわかったので事故と見せかけて殺すということはなさそうだと思う。
「だけれど約束はしてほしい。魔王様には謁見に一緒に行くことをね。礼儀だから」
「別にいいですよ」
行かなくても。
「では転移します。暴れないでくださいね。事故とか起きるかもしれませんので」
「わかった。では、いこう」
私たちの下に魔法陣が展開される。
そして、目の前の景色が一瞬で変わったのだった。魔の森の魔王城前。懐かしい景色だ。私たちは公爵様を置いて、そのまま中に入っていく。
「こ、コラ!」
中に入ると、アガルギルドに出会った。
「……帰ったのかパンドラァ!」
「おー、アガルギルドお久しぶり」
「やっとか! 城内のみんなも心配していたぞ! というか、魔王様が待ってる。謁見の間で」
「わかった。すぐいくよ」
すると、周りを見るとなぜか戦闘態勢の賢者たちがいた。
「あれ? なんか戦う気満々?」
「いえ、なぜか強い気を感じて……。我々が束になっても敵わないような強い気を……」
「神の力をかんじまして」
「二人いるな。一人はパンドラのようだが……。もうひとりは?」
なるほど、ローキッスを敵だと認識しているようだ。
「味方だよ。大丈夫。ほら、公爵様がきたからお迎えに行って。私はワグマのとこ向かうから」
私はそういって謁見の間に入る。
入った瞬間にドロップキックが飛んでくるが、液体化しているので問題なかった。ドロップキックがきかなかったことでビャクロが私の体を突き抜けて壁にぶち当たる。
「最初からすごい挨拶だな」
「ゲーム内で見るのは久しぶりだなワグマ」
「ワグマ? そうじゃないでしょ? 魔王様。ここは魔王様と敬愛を込めて呼ぶのが礼儀よ」
「はいはい魔王様。で、白々しい演技をいつまでやるの?」
「ばれた? 威厳あるように見せたんだけどどう?」
「多少は風格でてるな」
私がそう評価すると嬉しそうにワグマは腰かける。
「それよりあんたまた進化してない? 海王妃ってなによ」
「ま、いろいろあって。そろそろ公爵様が来るよ」
「そうね」
その時、公爵様が参られたという旨を伝えに来て、謁見の間に入ってくる。
公爵は私を見て目を丸くしていた。
「どうも。アドバル公爵様」
「は、はあどうも……。で、そちらのパンドラさんはなぜそこに?」
「あんた説明してないの? えっと、パンドラは魔王軍幹部よ。それも、軍師」
「軍師って戦国時代じゃないんだから」
私は竹中半兵衛じゃない。
「……そうでありましたか」
「まあいいさ。で、今回訪問従った理由は魔王領の視察ということだったな? なぜ視察がしたい。この魔王領は住民は一切いないのだが」
「……嘘を包み隠さず申し上げます。建物です」
「「「建物???」」」
私たち三人は思わず声を上げる。
「魔王城の造形美を、この眼でしかと焼きつけたかったのです」
「……パンドラ。嘘を言ってるようには?」
「見えない。あれ多分……」
「さすがの造形美といえましょう! 魔王の風格もさることながら魔王の威厳を高めるかのようなこの謁見の間。どれも素晴らしい技術の賜物だと思われます」
「……建物好き?」
「建物に興奮する痛い奴だな」
アドバル公爵も意外と残念な人です。




