公爵との話 ①
私はアドバル公爵に呼ばれ、邸宅を訪れた。
門が開き、私たち四人は中に入っていく。うわー、豪邸だなぁなんていう感想も抱きつつも、進んでいった。
案内されて部屋に入る。紅茶を出されたのでそれを飲んでいると。
「すまない、遅くなってしまった」
「いえ、ご公務もあってお忙しい中時間を割いていただきありがとうございます」
「なかなか勤勉な人ではないか」
上機嫌でアドバル公爵がソファに座る。
「まず自己紹介から。私はロバート・アドバル。アドバル公爵家の当主をしている。あなたは?」
「私は各地を旅する旅人です。名前はパンドラ」
「パンドラさん。いい名前だな」
「ありがとうございます」
私は紅茶を啜る。
「それで話なんだが、君が討ち取ったロッソ騎士団長のことだ」
「討ち取って何か問題でも?」
「いや、市民を無差別に殺すような団長は殺してくれても構わない……のだが」
「のですが?」
「いや、いい。もともとあいつらは悪人よりの騎士団だった。悪は碌な結末を迎えるわけがなかった。こういう終わり方になるのは自明の理か」
「というと?」
「あの騎士団についてはのちのち解体する予定だった。市民を脅し、ひれ伏させる騎士団なんて聞いたこともないからな。力をつけすぎていた」
「はぁ」
「こういう終わり方が、一番いいのだろうと思っている」
そうだね。悪はこういう終わり方がいいのだろう。
誰かに狂わされて誰かに終わらせられる。そういう結末を迎えるのなら多分私も……。いや、私は既に狂っているか。
「だが、あの事件には謎があるんだ。その謎が気がかりでな……。何言ってるのだろう。初対面に話す話ではないよな」
「そうですね。ですがあなたはその謎を突き止めるつもりですか?」
「もちろんだ。あの男が唯一愛した妻を自分で殺害した。その意図がわからんし狂うぐらいならなぜ自分で殺したのかという疑問もある」
「へぇ……」
私はレブルをちらっと見るとレブルもこちらをちらっと見ていた。どうします? というか、後ろめたさがあるんだろう。悪事にはきっと向いていないなレブルは。
罪悪感なんて感じなくてもいいんだ。レブルは。レブルは正義の味方でいてほしい。知らぬ存ぜぬで過ごしていて欲しい。悪いのはすべて私だ。レブルを利用しただけだ。
「なにか暗躍する影があると踏んでいる。その影はいずれ……」
「私はすべての謎を知っています。なぜロッソが自分の奥さんを殺したのかも……。ただその事実はあなたは知らないほうがいいと言っても?」
「……知りたいのだ。なぜあそこまで狂ったのかを」
「そうですか。ですが約束してください。話を聞いても私たちに危害を加えないと」
「ああ。ああ? や、約束する」
「そうですか」
私は、紅茶を飲み干した。
「まず結論的に言いましょう。その暗躍する影は私です」
「……は?」
「私は騎士団長の妻と娘を殺害し、その現場をわざと目撃させました」
「……えっと」
「それで次に追われる身となった私は剣で斬りかかられる前に変装スキルで彼の妻に変装し、わざと切られました」
「なるほど。それが妻殺害の……」
「自分の妻を切ったことにより狂ったのですよ。自分の妻の姿をした人を切ったことに」
「ま、待て! 貴方が切られたってことは貴方はなぜ生きているのですか?」
「その理由は……レブル」
「……はい」
レブルは聖剣で私の首をはねた。
私の首が飛ぶ……が、すぐに元に戻った。
「私は死なないんです。だからこそこういうことをしたんですよ」
「な、なな……」
「不死の人間がいるって思わないでしょう?」
私はにやりと笑ってみせた。




