フィガル騎士団の崩壊 ①
相手を壊すには相手の大事なものを壊す必要があった。
フィガル騎士団の団長であるロッソ・フィガル。あの時私を殺せと命じた老年の騎士だ。机に座り、なんだかイライラいらしているようだった。
すると、扉から誰かが入ってくる。
「あなたー。お昼ごはん持ってきたわよー」
「パパー!」
と、家族だった。
家族が来た瞬間、ロッソは笑顔になり、娘の頭をなでていた。その瞬間、私は思いついてしまった。ロッソを壊すことを。
正直フィガル騎士団が横暴で権力乱用をしているのは私には関係ないが、少々ムカつくものもある。これは私のエゴだろう。でも、許すという選択肢はほとんどない。
「まずは家族を破壊する」
私は騎士を模倣して、敷地内に入り込むのだった。
敷地に入りこみ、家族の案内を私がやるというと案内していた騎士はわかった、じゃ、頼んだといい、去っていく。
「案内を代わりました騎士のフィロソフィアと申します」
「あらあらぁ。いい子ねぇ。私は騎士団長の妻、パルネと申します」
「私はソフィーだよー!」
「パルネさんとソフィーさん。どうぞこちらへ」
私は案内を開始した。
人が普段いない応接間。私はにやりと笑う。すると、頭の中に念話が飛んできたのだった。これはローキッスの能力で相手にこうして語り掛けて精神を攻撃するらしい。厄介だよな。
《作戦開始するんか?》
《もちろん。ローキッスは騎士団長のところにいって奥様が応接間でお呼びですって伝えてきてくれる?》
《……準備は万端なんか? 先ほど潰すといったばかりでもはや終わらせるんか?》
《終わらせる。長引かせるつもりはないし、筋書きは既にできてる》
《相変わらずこっわいわぁ……》
むしろ今日のほうがベストなのだ。
相手を壊すにはまず一番大切にしているものを壊すほうが手っ取り早いのだ。私は善人じゃない。悪党だからさ。
私が騎士だという嘘から始まる騎士団の崩壊劇。悲劇となるか、喜劇となるかはわからない。
「奥様。この応接間でお待ちくださいな」
と、二人を中にいれる。
そして、扉を閉めた。私はナイフを構え、一気に二人のところに走っていく。そして、ナイフを首につきさし、喉を掻っ切った。パルネはなぜというような顔をして私を見る。そして、血を垂らしながらパルネは死んでいった。
そのあとにソフィー。ソフィーは幼いながらも何があったのかわかっていない。私は躊躇いもなく首を斬る。即死だった。
そして、次の作業に入ることにした。私は二人の死体を持ち上げて、壁にナイフで固定する。貼り付け作業をしていると、外からパルネ、呼んだか? という声が聞こえた。
それは騎士団長の声だった。
「返事がないな…。入るぞ」
「……ふふ」
扉が開かれる。
騎士団長は、部屋の惨劇を見て、固まっていた。が、すぐに再起し、パルネに駆け寄った。
「パルネ!? ソフィー!?」
「団長、どうしましょう……! 私が応接間に入ったらすでにこのような惨劇だったのです!」
「そんなはずはない!先ほどソフィーとパルネは私のところを訪れたばかりなのだ! それに、血が新しい……。さてはっ……!」
「ほう、案外頭は悪くないんだ」
騎士団長が剣を構える。
これから騎士団長の復讐劇が始まる。私は窓から飛び降りると、騎士団長も窓から飛び降りてきたのだった。
恨みのこもった目で睨みながら剣で追ってくる騎士団長。
私は必死に走る。そして、曲がり角を曲がってすぐに模倣スキルで違う人を模倣した。
それは、パルネだった。パルネの姿を模倣し、私は立ち止まる。衣服もパルネと同じになるのが模倣スキルの厄介な点だろう。
私が立ち止まると騎士団長は追い付き、覚悟!といって私を切り捨てるのだった。
だが気づいてももう遅かった。
「パルネっ……!? どうなって……!」
「ひど…いわあなた。私が何をしたっていうの……?」
「ち、ちがう! お前は別人だろう! パルネはッ……!」
「パルネは私一人よ……! あなた、恨むわ……」
私はそのまま地面に倒れる。
すると。
「う、うあああああああああ!?」
と、狂乱状態になりながら走り去っていった。
いてて……。リンネの力で死ぬことはないとはいえ切られたな。私は刺さった剣を引き抜き、今度は別の騎士に模倣する。
そして、中に入っていき、先ほどあったことを狂いもなく広めていった。そこには嘘も込めたけれど。
騎士団長にも言うべく、団長室を訪れる。
団長は机に突っ伏していた。
「失礼します、団長」
「…………」
返答がなかった。
「私は殺してない殺してない殺してない……! あれはきっと変装したパルネだっ……!」
「団長、騎士の間に団長がパルネ様を殺したという噂が……!」
「なっ……!」
「ここだけの話、本当ですか? ついにやっちゃいましたねえ」
私がそう煽ると、うるさいと言い、壁に飾ってあった剣を振り回す。
「あはは! もういい! 貴様らも死ね! そうだ、殺したんだよ俺が!」
「……そうですか」
私はそのまま逃げることにした。
作戦は最終段階に移動する……!
終わるまで速いよ。作戦建てるの早すぎるよ。




