キャンプファイア
燃え盛る炎。流れる音楽。
私は、ただそれを眺めていた。武宮君を誘おうと思ったのだが、武宮君は結構な人に踊ろうと誘われてて忙しそうだった。
イケメンだから仕方ないが……。なんていうかもやもやする?
「こうなったら私が強引に誘って助けてあげるか。仕方ない」
私は、武宮君に近づいた。
「ごめんね、踊る人はもう決めてるんだ」
と、武宮君は苦笑いでやんわりと断っていたが、みんな押しが強いのか私も躍らせてと聞かずにいる。私は武宮君の腕を掴むと思いきり引っ張った。
武宮君は私に引き寄せられる。
「武宮君。私と踊ってくれますか?」
「パン子さん……! 喜んで」
武宮君は私の手を取り、キャンプファイアの前に移動する。
そして、曲に合わせて踊り始めた。
やばいな。思った以上に体が動かねえ! どんだけ運動神経ないんだ私。誘っておいてこれはないな…というほど足がついていってない。
「すっげえ下手くそだな、私」
「そ、そうだな」
「お世辞も言わないでくれてありがとな」
「き、傷つかせた?」
「お世辞も何もなく普通に言ってくれて助かった」
上手いよなんて言われたら少し幻滅しそうだった。
お世辞にも上手いとは言えないのだ。だがこれでいい。運動苦手なのが私の個性!
「でも誘ってくれるなんて意外だったよ。こういうの興味なさそうなのに」
「なんか踊りたくなっただけ」
「そ、そうなんだ」
「相手は誰でもいいってわけじゃなかったけどね。武宮君もともと誘うつもりだったし」
「そ、そうなんだ」
「そういや知ってるか? このキャンプファイアで一緒に踊った男女は結ばれるんだって」
「そうなの?」
知らなかったのか。まあいいさ。
「もしかしたら私たち結ばれるかもな。伝説のようにいくんなら」
「そうかもしれないね……。ならパン子さんが誰にももらってくれなかったらもらってあげるよ」
「取り残されること分かったような口ぶりだね。武宮君は選り取り見取りだしね」
「あはは」
「ま、期待しておくよ。今はおどろっか」
私の将来がどうなってるかはわからない。
だけど、考えなくもない。武宮君と歩んでる未来だって考えたことは数回ある。下手な男より武宮君のほうが百倍くらいマシなのだ。友達だし。
恋人になるってのがいまいちわからんし好きでもないけど選ぶんなら武宮君だろうか。
こうして、私たちの林間学校は静かなまま終わりを迎える――
「あれで付き合ってないとかマジかよ」
「おいおいおいおい。あれで好きじゃないとかまじか」
また次からゲームかなー




