キャンプファイアの伝説
今日のメインはハイキングだった。
山を登るのだが、私は如何せん体力がない。みんなの足を引っ張る可能性も大いにあるのだ。
「ということでいこう、白露」
「はいはい」
白露が私をおんぶって山登りすることになった。
いやぁ、ラクチンラクチン。白露様々だよほんと。この様子だとまだ眠れそうだな……。
「白露。そんなバカの言うこと聞く必要ないわよ」
「いい。トレーニングにもなるし普段お世話になってるからな」
「テスト前にはほとんど勉強教えてあげてるわけですからこれぐらい」
自分で歩かないでいいというのは楽だなぁ。
「あんたってやつは……」
「仕方なくだよ。私って体力だけないんだよね。途中でばてて止まって待ってくれって状況になるよ」
「白露もそうなると考えないの?」
「白露が待ってっていうところ聞いたことないしな」
「体力仕事なら任せろ」
人を一人おんぶって山のぼりはそうそう楽じゃないしむしろつらい気がするが。
白露なら何とかなりそうな気がしなくもない。
「というわけで」
「わかったわよもうごちゃごちゃ言わないわよ……」
話しながらも白露は山道をどんどん歩いていく。
この上には山の展望台があり、そこでみんなでご飯を食べるというのが今回の目的だった。山上ってない私に達成感があるかは知らないが、この山を歩いてみんなが達成感に包まれるらしい。
「それにしても結構晴れたな。雲一つないぞ」
「この様子だと今日の夜のキャンプファイヤーも大丈夫そうね」
「そういややるんだっけ」
「そう。で、なんとキャンプファイアで一緒に踊った男女コンビが見事結ばれるっていう話よ。そういう伝説が残ってるんだけどあんたら想い人はいないの?」
「いないなぁ」
「私もだ。しいて言うなら柔道かな」
「柔道って人ですらないじゃない……。とかいう私もいないけど」
キャンプファイアで一緒に踊った男女が結ばれる、ねぇ。
そういう伝説はともかく、踊ってみたいかな。
「武宮君でも誘って踊ってみるか」
「……えっ」
「なに? なんか意外なの?」
「いや、こういうのに参加するのって意外だなって」
「そりゃ私も参加したくはなりますよ」
「なぜ武宮となんだ? 誰でもいいだろう」
「なんていうか……本能? 自分でもよくわからんけど」
なんで踊る相手に武宮君の名前が出てきたんだろう。
まあ考えるのはいいや。友達だから踊るだけだしな。
「あの主人公結構好感度高いわね……。なんかムカつくわぁ」
「気持ちはわかるが自覚はないのだな。結構愚鈍な私でもわかるっていうのに」
「二人なんかいったか? 悪口か?」
「悪口ではないわよ」
悪口ではないけどなんか言ったんだな……。




