一回目のオリエンテーション
私は飴を口の中に放り込む。
「なあ、この暗号どういう意味だ?」
私以外のほかの班の人は必死に謎を解いている。
私はというと、戦力外通告というか、すぐに終わっちゃうからっていうことでメンバーから外されていた。実際もう解けたし……。
この暗号はいたって簡単だよ。”いさつ”ということが書かれている。そして端には”解けなかった場合は井上先生を殺す”と書かれている。こんな簡単な暗号は楽勝でしょう。
この謎を解き、ようやく次のステージに進める。
林間学校での一回目のオリエンテーションがこの謎ときとは……。誰が考えたんだろうか。
「あさつ……ってわけじゃないもんな。これがヒントなら……」
井上だからいの上だからあはまちがってない。
ただまだあるよ。ヒントは。というか、答えを言ってしまうならば愛だ。たんなる文字遊びというかそういった類にしか思えないし。
「井上先生を殺すっていうのがまた謎だな」
「……背に腹は代えられない? 早く謎を解いた班が景品もらえるんでしょ?」
「……パン子さぁん」
「はいはい」
結局頼ってきたので私たちは先生の元に向かった。
先生が合言葉は?というと、
「愛」と私は答える。
「なぜそうなった?」
「まずいさつ、井上先生を殺す。井上だからあっていうのはいいとして、問題は殺すのほう。わざわざ殺すとか言ってるけどいいかえると殺害という言葉になるでしょ? つまり、さつが、いになるからね。結構簡単でしたよ」
「正解だ。それじゃ、一番最初にわかったから景品をやろう」
先生が箱の中から何かを出してくる。
それはお菓子だった。まあ景品としては妥当だろう。っていうか結構レアっていうか販売中止になったものもない? え、まじでいいの?
私は有難く受け取った。
「よし、お前らの班は今から自由行動良し。この施設を見て回ってもいいぞ。だが外には出るなよ」
「「「「「はーーい」」」」」
私たちは大広間から出ていった。
「あの謎簡単だったね。もうひとひねり欲しかったよ」
「そうかあ? 殺すって言いかたされてたからわかんなかったぜ。言い換えるなんてことわからねえよ」
「言い換えるとしても殺すってことなら殺人という言葉にもならないか?」
「それだとしても殺人っていう言葉ならヒントにはなりえないでしょ。ヒントにならないなら井上先生を殺すなんてヒントは使わないよ」
口の中の飴が小さくなったのでかみ砕いた。
「こういった謎解きはヒントをそのまま受け取るのがダメだよ。ヒントですら少し疑わないと。同じような言葉を探したりしてね」
謎解きなんだから謎が謎を呼ぶ。ヒントを真に受けたらそれこそ思うつぼなときもある。
ま、普通は疑わなくてもいいんだけどね。




