林間学校の始まり
早朝、学校前にみんな集まっていた。
9月27日。今日から林間学校に入る。二泊三日。とても楽しみにしている人も多かった。人数も多いが一年生全員が泊まれる施設を貸し切っているらしく、金だけはあるなと思う私であった。いや、月乃の家滅茶苦茶寄付してるらしいからね。学校側も月乃には下手に出れないんだとか。金持ちって怖い。
「ではバスで施設まで向かいます。施設までは数時間かかるので疲れるとは思いますが、皆さん頑張っていきましょう」
周りの生徒はみんなジャージを着ているが、私は私服だった。
だってしゃあないだろ。ジャージの取り置きがないって言われて二週間ぐらいかかると言われたんだよ。ジャージも制服もまだ届いてねえよ。あるのは瓦礫の下だよ。
私滅茶苦茶浮いてるよ。
「では、各自自分のクラスのバスに乗り込んでください」
私は重い足取りでバスに乗り込んだ。
なんで私こんな浮いてるんだろうか。別に気にはしないが、なんていうか心地よいものでもない。みんなと同じって結構いいものだよ?
異端を気取るなんてことは面倒だよ?
私は適当な席に座る。
私の隣には白露、目の前には月乃が座った。月乃の隣には有栖川さん。後ろには武宮君と梅田君が座っていた。なんかすっげえ固まったな。
「では、しゅっぱーつ!」
バスの扉が閉まり、動きだした。
窓の外を眺めている。
高速道路を走っているバスが向かうのは〇〇市のとある山の上の施設。結構設備が豪華らしくトレーニングルームなどの運動施設や、温泉、ゲームコーナーなどの娯楽施設も完備。
殺し合いが起きそうな場所である。起きたら溜まったもんじゃねえよ。
「こう座ってるの落ち着かないな。山の下から私だけ走っていきてえ」
「座ってるの楽だなぁ。運動しないって滅茶苦茶いいなぁ」
「言ってることが対比よあんたら……」
運動はあまり好きじゃないから仕方ない。
白露みたいに運動神経があったら楽しく感じるだろうけれど、私は運動神経は皆無だ。投擲以外並以下。それこそ跳び箱三段ですら飛べないほどの運動音痴。
苦手なものを好きになるほどマゾヒズムではない。
「運動の理屈はわかってるけど体が動かないんだよな」
「普通何がどうなるかわかっていたら出来そうなものだしゲームでは体結構動かしてるじゃないか」
「あれは単にゲームだからだよ。ゲームなら体術はできるけど現実だとマジ無理」
「パン子運動出来ないものねえ。ゲームは体術補正が素であるからまだしも現実ではそういうの無いものね」
「現実はやっぱりクソゲーだよな。リセットはできないしな」
いいのがでるまでリセットして続けるというのはソシャゲの基本だ。リセマラは心折れるんだぜ? 欲しいものが出ない限り延々と続いていくんだからな。無限地獄に近い。
「でも林間学校結構歩くわよ? ハイキングとか肝試し、キャンプファイアーにロッククライミング等々」
「ハイキングやりたくねえぁ……」
私は山の上に見える施設を目にしてそうこぼした。




